カッシーニ画像集:ちょっと異質な土星の姿

【2007年5月21日 NASA Mission News (1)(2)

NASAの土星探査機カッシーニは、観測開始から3年近く経った今もデータを地球に届け続けている。画像としても美しいが、そこから得られるデータは貴重なものだ。それに、研究者たちによる解析の過程で作られた画像は、「もう見飽きた」という方でも新鮮味を感じるかもしれない。


(北半球上空からとらえた土星の環の画像)

赤外線で撮影した土星の環。クリックで拡大(提供:NASA/JPL/Space Science Institute)

(土星の雲の画像)

赤外線で撮影した土星の雲。画像処理により構造が強調されている。クリックで拡大(提供:NASA/JPL/Space Science Institute)

NASAが公開するカッシーニの画像は、人間の目で見える色を再現しているものが多い。可視光で撮影された土星の環(リング)は白っぽく、本体の雲模様はとてもなめらかで、「カッシーニの画像」といえばどんなものなのかイメージが定着してしまった方も多いことだろう。

しかし、研究者たちにとって必要なのは「実際にこう見える」という画像ではないし、そもそもカッシーニは可視光だけでなく、目に見えない赤外線を撮影することもできる。たまには、そんな中で生まれた画像を見てみるのもおもしろいだろう。ここで紹介するのは、いずれもNASAが最近公開した、赤外線データにもとづく疑似色画像だ。

1枚目の画像は土星の北半球上空から撮影したもので、環は青く着色されている。実際には、赤外線の輝きをとらえたもので、本体との色の違いは放射している赤外線の違いを反映したものだ。一般の望遠鏡でも見える有名な「カッシーニの間隙(かんげき:環のすきまのこと)」は、画像左上にはっきりと見えている。

2枚目は土星本体を撮影したものだ。人間の目に見える光景を再現しようとすると土星の雲はとてもなめらかに見えるが、この画像にはどこか木星を思わせるような、コントラストのはっきりした模様が見られる。この画像も赤外線をとらえたもので、雲の構造がはっきりするように画像処理がほどこされている。

土星探査機カッシーニ

周回軌道から土星とその衛星の探査を行う初の探査機であるカッシーニは、1997年に打ち上げられ、2004年7月から観測を開始した。太陽からの直接光に邪魔されることなく長時間観測することで、新たな環が検出されている。土星の環は衛星と密接なつながりがあるが、新発見の環には、衛星がみつかっていないものもある。未知の衛星が存在する可能性があり、カッシーニによる画像から新たな衛星が検出されるかもしれない。(「スペースガイド宇宙年鑑2007」より)