2006年10月の星だより

【2006年10月1日 アストロアーツ】

やっぱり秋は「天文の秋」。夜も長くなり、天候も安定して星を見るには最高のシーズンです。今年の秋も、恒例の星座巡りから探査機の情報まで、天文の世界は話題がいっぱい。そんな中から、今月注目の現象や天文学の話題を紹介します。


秋の星座こそが、一番親しみやすい

(秋の星座)

1つの神話に登場する、秋の星座たち。クリックで拡大(10月27日発売予定のステラナビゲータ Ver.8で作成、画面は開発中のもの)

「秋の星座は寂しい」とよく言われます。確かに、「秋の星座」と呼ばれるものに注目すると、1等星はみなみのうお座のフォーマルハウトただ1つで、全体としてとても地味です。

しかし、他の季節に比べて華々しさがないことがかえって昔の人々の想像力を刺激したのでしょうか。秋の星座ほどお互いに密接に関わり合っていて、ドラマチックな神話に彩られたものはありません。アンドロメダ、カシオペヤ、ケフェウス、くじら、ペルセウス、ペガススという、秋の有名な星座はすべて1つの物語に登場します。さらに、みずがめ座、うお座、みなみのうお座などといった星座にも共通の由来があったのをご存じですか。由来や神話を思い描きながら星座を探すと、楽しさは何倍にもなることでしょう。詳しくは特集「秋の星空を楽しもう」をご覧ください。

そうそう、アンドロメダ座大銀河、M31をはじめとした星雲・星団も忘れてはいけません。「秋の星空は物足りない」というのは、光があふれる都会で見上げたときのお話。行楽シーズンに遠くへお出かけの際は、ぜひ繊細な秋の星空巡りに挑戦してみてください。ちなみに、宵のうちなら夏の大三角や明るい天の川、遅い時間になれば1等星だらけの冬の星座も昇ってくるので、見どころは満載です。もちろん、準備は万全に。

期待の彗星と流星

(スワン彗星(C/2006 M4)の写真)

9月19日未明に撮影されたスワン彗星の写真(提供:門田健一)

今年の秋は、双眼鏡や小型望遠鏡で観測できる彗星がいくつかやってきます。一番の注目は、予想外に増光していて、10月上旬に6〜7等級に到達すると見られる「スワン彗星(C/2006 M4)」です。10月も、初めのうちは明け方の北東のひじょうに低い空にありますが、やがて夕方の北西の空で見やすい位置に上がってきます。すでに「肉眼でも見えた」という観測者もいるほど明るくなっているので、双眼鏡なら楽々見られることでしょう。

また、10月には星空を彩る流星群がいくつかあります。8日が極大となる「ジャコビニ流星群」は、流星群の元となるチリをばらまく「ジャコビニ・チンナー彗星」が通り過ぎたばかりなので、比較的多くの出現が期待されます。また、21日が極大の「オリオン座流星群」は、1時間に10個とあまり派手さのない流星群ですが、月明かりがまったくない絶好の条件ですので、秋から冬の星座を眺めながら観測してみましょう。

火星から届く情報に注目

10月24日は、火星が「合」になります。これは、地球から見て火星がちょうど太陽の向こう側に回ることを意味します。また、9月30日には地球からもっとも遠ざかっています。つまり、火星を観測するには最悪の1か月間ということになりますが、それでも火星からの情報に目が離せません。

現在、火星には4機の周回探査機と2機の地上探査車があります。中でも、3月に火星に到着した「マーズ・リコナサンス・オービター」に注目が集まっています。半年かけて少しずつ軌道を調節し、ようやく観測のための軌道に入って、今月から本格的な観測を行うからです。

マーズ・リコナサンス・オービターの最大の特徴は、高い解像度を誇るカメラを搭載していることです。地上にある数十センチメートルの物体をも識別できて、「リコナサンス(reconnaissance、偵察)」の名にふさわしく、将来の有人探査に必要な情報を集めます。他にも気象観測装置など計6つの機器を搭載していて、これから始まる本格的なミッションの成果が期待されます。アストロアーツニュースでも、最新情報を順次お届けします。

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