母なる恒星が死んでも、惑星系の活動は終わらない

【2006年2月9日 Spitzer Space Telescope Newsroom

地球をはじめとした九つの惑星と、小惑星や彗星などの天体は、すべて太陽の周りを回っている。その太陽が燃料を使い切り寿命を迎えたら、いったいその周りの惑星系はどうなってしまうのだろう。誰もが考えずにはいられない疑問だが、NASAの赤外線天文衛星、スピッツァー宇宙望遠鏡がヒントを見つけた。恒星が核融合を終えて変わり果てた姿となっても、生き残って回り続ける彗星がいた証拠をつかんだのだ。


白色矮星G29-38を取り巻くちりの想像図

引きちぎられながら白色矮星G29-38へ落下する彗星の想像図。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/T. Pyle (SSC))

太陽程度の大きさの星は、数十億年に渡り核融合反応によって輝いた後、いったん赤色巨星となった後、白色矮星としてその一生を終える運命にある(脚注参照)。もしその恒星に、太陽のような惑星系があれば、赤色巨星となった段階で内側の惑星は飲み込まれてしまうだろう。一方で、はるか外側を回る惑星や彗星は、生き残る可能性がある。

G29-38も、5億年前にこうした変化を体験した白色矮星だ。5億年の間、G29-38はただ、徐々に冷えていくだけだったが、どうやら周りの惑星系までは死に絶えていなかったらしい。この白色矮星に未知の赤外線源があることに気づいた研究グループが、スピッツァーの高性能分光器によって観測したところ、その正体は大量の、非常に小さなケイ素の粒子であることが判明した。そして、このチリは、おそらく彗星が比較的最近放出したものだという。

われわれの太陽系では、彗星は、カイパーベルトやオールトの雲と呼ばれる、もっとも外側でもっとも冷たい領域に存在している。そして、別の彗星や外惑星などによって、彗星の軌道が影響を受けたとき、はじめて暖かい太陽に近づく旅が始まるのだ。しかし、旅の果てに彗星は消えてしまう運命にある。暖められた彗星はチリやガスを放出して徐々に小さくなっていき、最後には崩壊するか、他の天体に衝突してしまう。G29-38が燃える星としての一生を終えた後も生きながらえたこの彗星たちも、白色矮星による潮汐力で引きちぎられてしまったと考えられるわけだ。

今のところ、チリの正体は崩れ去った彗星の残骸であるとする説が有力だが、他にも可能性が存在する。その中でも興味深いもののひとつは、今、G29-38の周囲では第二の惑星形成が進んでいて、物質が集積している様子が、赤外線で見えているというものだ。50億年後、地球は大きく膨れた太陽に吸収されてしまうと考えられているが、太陽系自体は、私たちの想像を超えて、その姿を変えながら、さらに何億年もの間存在していくのかもしれない。


白色矮星 :表面温度が1万K程度で色が白く、大きさが太陽の100分の1ほど(地球程度)しかない恒星。恒星進化の終末に達した星たちである。太陽の8倍以下の質量の星が主系列から離れ巨星化した後、星の外層を徐じょに放出して惑星状星雲となり、ついにその中心に残された星が白色矮星で、核融合反応も止まり余熱で光りながら、しだいに冷えていく。(「最新デジタル宇宙大百科」より)