多くのクエーサーは、ちりに隠されたままだった

【2005年8月22日 JPL News Releases

オックスフォード大学やスピッツアー科学センターなどの専門家からから成るチームがNASA のスピッツァー宇宙望遠鏡による観測で、これまでは見ることができなかった、ちりに隠された21個のクエーサーを発見した。この結果は、殆どの大質量ブラックホールはちりの中で成長すること、さらに、われわれの宇宙にはまだ数多くのクエーサーが存在していることを示唆している。

(スピッツァー宇宙望遠鏡が捉えた遠方銀河の画像)

スピッツァー宇宙望遠鏡が捉えた遠方銀河の画像(銀河は、画像中央 黄色い疑似カラーで示されたもの)。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/A. Martinez-Sansigre(Oxford University))

クエーサーとは、宇宙で最も明るい天体で、その中心には大質量ブラックホールが存在している。ブラックホールは、膨大なちりとガスでできた円盤に囲まれており、大きいものは、恒星1千個分の質量を一年で飲み込んでしまう。このブラックホールの活動によって、クエーサーは他のどんな天体よりも多くの量のX線を放出している。そのため、X線背景放射の計測によって、だいたいの個数を推測できる。しかし、実際にX線と可視光で観測されたクエーサーの数は、それに比べるとはるかに少ないものだった。そこで何人かの天文学者は、殆どのクエーサーの光はちりやガスに遮られているのだろうと推測した。クエーサーがちりだらけの銀河の中にあるか、ブラックホールのすぐ周りをリング状に囲むちりが光を遮る位置にある、というわけだ。この推測に基づき、オックスフォード大学やスピッツアー科学センターなどの研究者からから成るチームがスピッツァー宇宙望遠鏡による観測を行った結果、星空のごく狭い領域に21個のクエーサーが発見された。21個のうち、10個は、どちらかというと成熟した、巨大な楕円銀河に存在すると考えられており、残る11個は、まだ星形成が進む若い銀河の中に存在すると考えられている。

今回の発見によって、われわれの宇宙にはまだ数多くのクエーサーが存在することが示された。そして、ほとんどの大質量ブラックホールがちりの中で隠されたまま成長することがわかった。より広い範囲の星空を探索することで、ちりだけでなく、クエーサーを包む数々の謎のベールをはがすことができるかもしれない。


クエーサー: Quasi-Stellar Object(準恒星状天体)の略。QSO、準星とも呼ばれてきた。恒星のように点状に見えながら、スペクトル観測からは銀河のような性質を持ち、大きな赤方偏移が観測され、後退速度がひじょうに大きい。つまり、きわめて遠方の天体である。実際、数十億光年以遠に観測され、百数十億光年かなたのものも発見されている。このような超遠距離で光っているということは、莫大なエネルギーを放出しているということで、それは銀河系の数百倍〜数千倍に達する巨大なものである。その正体は、宇宙の比較的初期に形成されたきわめて活動的な銀河(の中心核)と考えられる。おそらくその中心に巨大ブラックホールがあり、これに流れ込む物質の莫大な重力エネルギーの解放が原因となっているのであろう。(最新デジタル宇宙大百科より