宇宙誕生初期に、生命のもとをばらまいたスーパーウィンド

【2005年8月9日 PPARC News

イギリス、ダラム大学の率いる研究チームが、115億光年離れた銀河で起きた大爆発のなごりを発見した。銀河を引き裂かんばかりの爆発によって生じた、「スーパーウィンド」と呼ばれる、銀河から超高速で吹き出す物質の流れの証拠が観測されたのだ。スーパーウィンドは、惑星や生命を作るのに必要な物質を宇宙に広く行き渡らせたメカニズムとして考えられている。

(巨大な若い銀河で起きたスーパーウィンドの想像図)

巨大な若い銀河で起きたスーパーウィンドの想像図。クリックで拡大(提供:PPARC/David Hardy )

カナリア諸島にある口径4.2mのウィリアム・ハーシェル望遠鏡によって、われわれから115億光年離れた爆発的な星形成時期にある若い銀河が観測された。銀河の内部で生じた光は、数十万光年離れたところで銀河を取り巻くガスによって減光されている。その分布の様子などから、次のようなシナリオが考えられた。観測されている現在の銀河からさかのぼること数億年、銀河ができたばかりのころ、激しいペースで星が産まれる中で、巨大質量の星が数多く爆発した。これはおそらく、銀河中心の超巨大ブラックホールがエネルギーを与えたことが引き金となっている。吹き飛ばされた物質は秒速数百キロメートルで銀河の外へ吹き飛ばされ、この流れがスーパーウィンドと呼ばれる。

スーパーウィンドの存在は理論上予測されており、われわれの近くの銀河でも観測されていたが、それははるかに小規模なものだった。遠い、すなわち若くて活発な銀河におけるスーパーウィンドの観測は困難を極めたが、今回ついに証拠が見つかり、それがまさに銀河スケールの巨大なものであることが判明したのだ。

巨大スーパーウィンドは、宇宙の歴史と銀河の形成においていくつかの重要な役割を果たしている。その1つ目として、星が爆発的に産まれ続けるのを食い止め、銀河の大きさを制限する。スーパーウィンドのない宇宙では、非常に明るい銀河が実際の宇宙に比べて数多く存在することが理論から導かれる。2つ目の役割は、星が作り出した重い元素を、銀河間空間まで吹き飛ばすことだ。惑星の形成、そして生命の誕生に欠かせない元素(炭素、酸素、鉄)が、ビッグバンからたった20億年の間に宇宙の隅々まで存在していたことは長い間謎だった。今回の発見で理論と観測が結びつき、スーパーウィンドの重要性が再確認されたことになった。