世界最大の公開望遠鏡「なゆた」完成

【2004年11月10日 国立天文台 アストロ・トピックス(63)

兵庫県立西はりま天文台に、口径2mの反射望遠鏡「なゆた」が完成して、11月13日から一般公開が始まりました。日本国内では最大の望遠鏡であり、公開を目的とした望遠鏡としては世界一の大きさです。

公開天文台のパイオニア的存在である西はりま天文台には口径60cmの反射望遠鏡があり、一般を対象とした観望会に、また学術研究にも用いられてきました。60cmの望遠鏡のスタートから14年、さらに遠くの宇宙を探るべく、新たに口径2mの反射望遠鏡プロジェクトが立ち上がりました。

2m望遠鏡プロジェクトは、2001年にゴーサインが出され、2003年1月から新天文台の建設が始まりました。望遠鏡の組み立ては12月から始まり、2004年2月にはフランス製の2m主鏡が装着され、エンジニアリングファーストライトに成功したのは3月でした。その後、光軸を調整するハルトマンテストなどの後、この度の公開開始を迎えました。

口径2mの大きさは、日本国内にある望遠鏡としては、一番の大きさです。それまで日本で一番であった国立天文台岡山天体物理観測所の188cm望遠鏡の記録を44年ぶりに更新しました。また、この望遠鏡は一般を対象とした公開に用いられる望遠鏡としては、世界最大の大きさです。

2m望遠鏡は、すばると同様の円筒形エンクロージャーに格納されています。2m望遠鏡の高さは約7m、幅約8m、総重量は約40トンです。

2m望遠鏡には、観望用の眼視観望装置の他にも、ハイビジョン超高感度カラーテレビカメラ、可視冷却CCDカメラ、3波長同時観測近赤外線カメラが装着され、研究用の観測に使用されます。眼視観望装置で覗いて見た場合は約14億年先の銀河が、また可視冷却CCDカメラを用いると「宇宙の水平線」と呼ばれる約140億光年先に天体があるとすれば、計算上は撮影が可能です。

一般の方を対象とした観望の他にも、2m望遠鏡は学術的な成果を出すため、さまざまな分野のテーマが検討、計画されています。さらに研究者のみならず、一般の方が研究観測に参画するプロジェクトも検討されています。

ところで、西はりま天文台2m望遠鏡には、「なゆた」という愛称がつけられています。これは、サンスクリット語に由来し、10の60乗を表す数量を意味しています。3651通の応募の中から、愛知県岡崎市の高校生の応募作品から選ばれたものです。

2m「なゆた」望遠鏡の一般の方の観望や利用に関しては、西はりま天文台に問い合わせてください。

注:このアストロトピックスは、兵庫県立西はりま天文台の鳴沢真也(なるさわしんや)さんにいただいた原稿を元に作成しました。

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