天文物理の快挙!銀河系の中心、いて座A*のサイズは地球の軌道に入る大きさだった

【2004年4月5日 NRAO Press Releases

アメリカ科学基金(NSF)のVLBA(超長基線電波干渉計)を用いて銀河系(天の川銀河)の中心領域を観測したところ、銀河系中心のブラックホールを取り巻く天体のサイズが明らかになった。発表によれば、ブラックホールを取り巻く天体の大きさは地球の軌道以下で、その質量は太陽の4百万倍程度だということだ。また、ブラックホールそのものの大きさは水星の軌道以下であることも計算された。

(天の川銀河の中心領域の画像)

銀河系の中心領域。画像中心にある白い点が、いて座A*。画像中のスケールは1光年に相当(提供:NRAO/AUI/NSF、Jun-Hui Zhao、 W.M. Goss)

銀河系の中心に謎の天体(「いて座A*」と呼ばれる電波源)が発見されたのは、今から30年前のことで、以来この天体についての観測を誰もが切望していた。しかし、可視光による観測は、ちりに邪魔されるために不可能であった。電波観測ではちりを見通すことができるのだが、電波はプラズマによって散乱されるため、やはり観測は困難で、大きさを測定するのは難しかったのだ。

今回のVLBAによる観測で、ついに「いて座A*」が捉えられ、その大きさが地球の軌道とほぼ一致するサイズであることが明らかにされた。また、ブラックホールそのもののサイズについても、直径約2000万キロメートルで水星の軌道の中に収まる程度という計算結果がもたらされた。まさに、天文物理の快挙と言える観測結果が得られたのだ。

しかし、今回のVLBAの観測からは、この電波源の性質などはわかっていない。この天体の形の観測が次のステップとなる。天体の形状から、この天体がジェットであるか、薄い円盤であるか、または球状の雲であるのかが確定できるからだ。また、近い将来には、ここにブラックホールの強力な重力によって起こる重力レンズ効果の影も観測されるだろうと期待されている。