巨大な惑星状星雲の発見

【2004年4月1日 国立天文台 アストロ・トピックス(1)

スローン・デジタル・スカイ・サーベイ(SDSS: Sloan Digital Sky Survey)は、アメリカ、日本、ドイツなどが実施している宇宙の地図作りのためのプロジェクトです。アメリカ・ニューメキシコ州にあるアパッチポイント天文台に設置された、口径2.5メートルの望遠鏡によって、毎晩のように観測が行われ、膨大なデータが公開されつつありますが、その中から思いがけない発見がありました。巨大な惑星状星雲が見つかったのです。

惑星状星雲とは、ガスの星雲の一種で、天文ファンにはおなじみの天体です。こと座の「環状星雲(M57)」、こぎつね座の「亜鈴状星雲(M27)」などをご存じの方も多いでしょう。望遠鏡で眺めると見かけが少し惑星に似ているために、このように呼ばれていますが、太陽系の惑星とは何の関係もありません。あまり質量の大きくない、太陽程度の恒星が、進化の最後の段階で白色矮星になる時、その周囲に放出したガスが惑星状星雲となります。

有名な惑星状星雲で大きなものとしては、これまでみずがめ座の「螺旋状星雲(NGC 7293)」が知られていました。視直径が約15分角と月の見た目の直径の半分ほどもあります。一方、年齢を経て拡散した、輝度の低いものまで含めると、シャープレス216という惑星状星雲が最大で、その直径は1.6度もあります。

今回、SDSSで発見された惑星状星雲は、直径が2度よりも大きく、地球から見える最大の惑星状星雲ということになりそうです。惑星状星雲を生みだした星もPG1034+001という白色矮星と特定されています。大きいということは、逆に言えば太陽系に近いということに他なりません。白色矮星の距離から推定すると、この惑星状星雲までの距離は、約150パーセク(1パーセク=3.26光年)となり、シャープレス216の130パーセクに次ぐ近さとなります。

発見者にちなんで「Hewett 1(ヒューイット ワン)」 と命名された惑星状星雲の周囲を、水素の発するHα輝線のマップで調査してみると、さらに驚くべきことがわかりました。2度と思われた星雲の広がりの、さらに外側に10度角×16度角もの大きさの楕円形になった星雲状の構造が見つかったのです。このような大きな構造は、年老いた惑星状星雲である可能性が指摘されています。

ところで、これほど大きな星雲となると、プロが通常用いる大型の天体望遠鏡では視野が狭くて全体を撮影することはできません。アマチュア天文家の皆さんで、ぜひ撮影を試みられてはいかがでしょうか?

Hewett 1の中心位置は次のとおりで、しし座の南のろくぶんぎ座にあります。

赤経  10時37分
赤緯 -00度18分 (2000年分点)
Hewett 1周辺の星図(22KB)

<参照>

  • 国立天文台 アストロ・トピックス (1): 巨大な惑星状星雲の発見
  • Hewett et al., Astrophys. J., 599, L39(2003).
  • Rauch et al., Astron. Astrophys., 417, 647(2004).

<関連リンク>

<関連ニュース>