初期宇宙の銀河は、かなり成熟していた!ブラックホールの影響か?

【2004年1月15日 Gemini Press Release

ハワイにあるジェミニ北望遠鏡を用いた観測から、80億から110億年前の若い宇宙にある銀河はかなり早い時期に予想以上に成熟していたという研究結果が得られた。従来の予想とは異なる結果で、宇宙の歴史の謎を解き明かす重要な発見となりそうだ。

(ビッグバンから現在までの宇宙のイメージ)

ビッグバンから現在までの宇宙のイメージ。赤い四角で囲まれた部分が、今回発見された遠方銀河の時期、左端が宇宙の始まりで右端が現在(提供:Gemini Observatory)

これまでの理論では、初期宇宙では小さく若い銀河が衝突と合体を繰り返していたと考えられてきた。しかし、今回の観測結果によれば、初期宇宙にもすでにかなりの数の星が形成されている銀河が存在しているのだ。光を覆い隠すダストもなく、明らかに成熟した銀河の姿が捉えられた以上、初期宇宙における銀河の姿について新たな概念が必要となる。たとえば、初期宇宙にはブラックホールが予想以上に偏って存在しており、銀河の種をまく大きな役割を果たしていたなどという仮定も考えられているようだ。

銀河の成熟度だけでなく、星の形成についても興味深いデータが提供された。それは、星間ガスの化学組成が、予想以上に重い元素(金属元素)を含んでいたという点だ。理論天文学者たちは、初期宇宙における銀河や星の形成理論について、今までの予想を徹底的に考え直す必要がでてきてしまったのである。

今回の発見は、赤方偏移の砂漠地帯とでも言えるような観測の難しい遠い宇宙におけるものである。宇宙誕生から30億から60億年しかたっていないころに発せられた、夜空の300分の1の明るさというかすかな光を捉えるという、まさに赤方偏移の限界波長の観測に成功したと言える。今までは仮定することしかできなかったような、発見することさえ難しいとされていた研究対象が、現実に観測されたことで、銀河進化の研究が大きく発展することは間違いなさそうだ。