2基のVLTによる光干渉実験に成功

【2001年11月15日 国立天文台天文ニュース (494)

(VLT によるアケルナルの干渉縞のグラフ)

VLT によるアケルナルの干渉縞(提供:ESO)

ヨーロッパ南天天文台(ESO)は、口径8.2メートルの巨大望遠鏡二基により、恒星からの光の干渉実験をおこない、アケルナル(αEri)を初め、いくつかの恒星の角直径を測定することに成功しました。これによって145光年の距離にあるアケルナルの角直径は0.0019秒と決定されました。この角度は、地球から月表面に置いた4メートルの車を見たことに相当します。ここからアケルナルの実直径は1300万キロメートルで、太陽の10倍近くもの大きさであることがわかります。

8.2メートルの望遠鏡四基を備えたチリのセロ・パラナル天文台でESO が恒星光の干渉実験を進め、口径40センチの望遠鏡ですでに実験に成功したことは、3月にお伝えしました(天文ニュース426)。今回は、当面の目標としていた8.2メートル望遠鏡同志の干渉観測に成功したのです。これは、今後さまざまな方面での科学観測に大きな道を開く成果といえましょう。

今回の観測は2001年10月29日から始められ、四基のVLTのうち102メートル離れたアントゥとメリパルの二基で受けた恒星光を干渉させたものです。望遠鏡に入った光はナスミス焦点に集められ、さらに望遠鏡下のクーデ焦点に導かれ、それから地下トンネルのダクト内の遅延ラインを経由して光を干渉させるビンチ(VINCI)装置に届きます。そこで両方の望遠鏡からの光を、その位相を合わせて重ね合わせて干渉縞を出し、そのコントラストを解析することで星の角直径を求めます。この間、光が通過する距離は約200メートル、25個の鏡で反射る複雑な経路をたどります。観測期間中、この全経路長を1マイクロメートル以下の精度に保つ必要がある精密な作業です。

まだ予備的な結果に過ぎませんが、その数日の干渉観測により求められたいくつかの恒星の角直径をお知らせしましょう。これらは、以下の通りです。 青色わい星アケルナル(αEri):1.92ミリ秒。M0型赤色わい星HD217987:0.92ミリ秒。巨星HD36167:3.32ミリ秒。円盤をもつことで知られているεEri:2.20ミリ秒。同じく円盤をもつフォーマルハウト(αPsA):2.31ミリ秒。セファイドζGem:1.78ミリ秒。セファイドβDor:2.00ミリ秒。また、大質量の明るい青色変光星で正体がよくわかっていない謎の天体ηCarも観測されましたが、コントラストの弱い干渉縞が得られたに過ぎず、数ミリ秒の角直径であることがわかっただけでした。