球状星団内に惑星サイズの浮遊天体?

【2001年7月5日 国立天文台天文ニュース (454)

球状星団M22を利用して重力マイクロレンズ現象の検出をしていた宇宙望遠鏡研究所のサフ(Sahu,K.C.)たちは、恒星質量、惑星質量の天体によると推定されるマイクロレンズ現象を検出したとの発表をしました。惑星質量の天体による現象が確実であれば、球状星団の質量の約10パーセントは、恒星に束縛されていない浮遊惑星状天体によって占められることになるそうです。

二つの天体が視線方向にほとんど重なりますと、遠方の天体(光源星)の光は、近くの天体(レンズ星)の重力で曲げられ、位置がずれ、ときには二重像、四重像などで観測されます。これが重力マイクロレンズ現象です。レンズ星の質量が小さいときは、単に光源星の増光が観測されるだけです。光源星、レンズ星の距離と相対固有運動がわかっていれば、変光の光度曲線からレンズ星の質量を計算することもできます。

しかし、二つの天体が視線上に重なるのは、めったに起こることではありません。それがもっとも起こりやすいのは、光源星もレンズ星も星の密集しているところでしょう。この点を考えたサフたちは、レンズ星として球状星団の中心部分を選び、光源星として、星密度の高い銀河部分をとりました。具体的には、「いて座」の銀河を背景にして、球状星団M22を観測したのです。

実をいうと、球状星団の中心部は星が密集していますから、背景の星を見分けるのは容易なことではありません。そこでサフたちは、地上望遠鏡よりはるかにシャープな星像が得られるハッブル宇宙望遠鏡を使い、そのWFPC2カメラで、1999年2月から6月までほぼ3日おきに、M22中心部の3領域に対して43回の観測をおこない、背景の星約8万3000個の明るさの監視を続けました。その結果、ひとつの星がほぼ1ヶ月にわたって増光し、最大で3等級以上明るくなったことを突き止めたのです。これはほぼ確実にマイクロレンズ現象と推定され、レンズ星の質量は太陽の0.13倍と計算されました。

そのほか6個の星に増光が認められましたが、これらはそれぞれが一回観測されただけなので、確実にマイクロレンズ現象であるとの断定はできません。仮にそうだとすると、レンズ星の質量は木星の4分の1程度になり、しかも主星から大きく離れていることが必要になります。ここから浮遊惑星が存在するという考え方が生まれたのです。その頻度から、その質量は球状星団の約10パーセントに達すると計算されました。しかし、今後、これらが真にマイクロレンズ現象であることを確認する観測が必要になるでしょう。

<参照>

<関連>