ミード、ETXシリーズの新型 ETX-70AT を発売

【2001年3月21日 アストロアーツ】

アメリカの天体望遠鏡メーカー「ミード・インスツルメンツ社」の日本総代理店である(株)ミックインターナショナルと販売代理店の(株)樫村の2社が、3月15日に新型天体望遠鏡の発表会を都内のホテルにて行なった。

今回発表されたのは、口径70ミリ、焦点距離350ミリのアクロマート屈折望遠鏡を搭載した ETX-70AT で、すでに販売されている ETX-90EC/125EC の廉価版ともいえるものだ。スタイルはダブルフォークアームの経緯台式架台にフリップミラーを組み込んだ短い鏡筒で、ETX-90EC/125ECのデザインを踏襲している。鏡筒部、架台部共にほとんどがABS樹脂製で、重量はわずかに3キログラム程度しかない。

さらに、天体の自動導入を行なうコントローラーのオートスターが標準装備となっている。このオートスターは ETX-70AT 専用で、テンキーが省略されるなど、スペック的に簡素化されている面もあるが、実際の使用では煩雑さを感じさせないともいえるだろう。もちろん、パソコンと接続し、専用のソフトウェアでコントロールすることも可能だ。

また、アイピースも31.7ミリ径アメリカンサイズの MA9ミリ、MA25ミリの2本が付属する。倍率はそれぞれ14倍と39倍で、比較的低倍率しか得られない。もっとも、ファインダーがオプション扱い、さらには口径70ミリの短焦点鏡ということを考慮すれば、まずまず適切な選択といえるだろう。

ミード社は、91年にアマチュアユースの天体望遠鏡では世界初の天体自動導入・自動追尾を可能にした経緯台式架台のシュミカセ「LX-200-20」を発表している。LX-200シリーズは誰にでも扱える簡単操作の望遠鏡として人気を集めたが、大きさ、重さ、価格の面を考えると、ある程度マニア向けの仕様といえるだろう。

このLX-200シリーズよりも普及機的な位置づけで数年前に販売されたのが、ETX-90EC/125EC といえるだろう。卓上でも使えるコンパクトな望遠鏡だが、マクストフカセグレンというややマニア向きとも取れる光学系が採用された(もちろん、この口径、鏡筒サイズでさまざまな収差を減らすためには、ある意味で必然)ためか、ETX-90EC でもオートスターを含めた実販価格は10万程度と、気軽に購入するにはやや現実的ではない価格設定だった。

ETXシリーズに対して、さらに安価な価格設定がされたのが、昨年に発売されたDSシリーズである。経緯台式架台の口径6センチの屈折と口径11.4センチニュートン反射の2機種がラインナップされているが、長めの白い鏡筒、三脚に載せられた黒い架台という一般的な天体望遠鏡のイメージをそのままのスタイルだった。もちろん、ミード社ならではのオートスターをオプションで取り付けが可能だったものの、従来のミード製品のツール(道具)的イメージからやや離れたトーイ(玩具)的な雰囲気が強かった望遠鏡だ。

新たな ETX-70AT は、従来のETXシリーズ(ややマニア向け)とDSシリーズ(トーイマーケット)のちょうど中間を埋めるような位置づけと見ることができるだろう。ユーザー層としては、初心者がターゲットとなるが、デザイン的にもマニア以外の人には目新しく、モーター内蔵でコンピュータ制御のコントローラが標準装備となれば、それなりのインパクトがあるはずだ。もちろん、マニュアルは完全日本語版で、なんと巻頭にストーリーマンガが採用されるという画期的な構成となっている。

気になる価格はオープンだが、推定市場価格は5万円を割り込む予想。望遠鏡ショップやカメラ店のみならず、パソコンの周辺機器として電気量販店、さらにホームセンター系販売店にまで販路の拡大が予定されている。

スペック、価格、販路、さまざまな面から見ても、現状の望遠鏡市場の中では、もっとも今風でもっとも遊び甲斐のある入門者向けの望遠鏡としておすすめしたい機種といえるだろう。

ETX-70AT

ダブルフォークアーム、フリップミラーを内蔵した接眼部、ミードブルーに塗装された鏡筒など、だれが見てもETXシリーズというスタイルのETX-70AT。ピント合わせは接眼部のつまみを回すことで対物レンズが繰り出されるという方式だ。上下軸ロックの強度や水平軸のメカニカル的な回転制限など、ETX-90EC/125ECで気になっていた部分がほぼすべて改善されていて、完成度が増しているといえるだろう。

電気的にも改良がされていて、鏡筒重量が軽く、最高速度が対恒星時1200倍ということもあるが、電源が単3型乾電池6本で約20時間駆動が可能な低消エネ回路となっている。もちろん、電池は架台本体内に収納できる。

オートスターは専用品で、もちろん、自動導入を行うにはあらかじめアライメントと呼ばれる初期設定をきちんと行わなくてはいけない。このあたりが使いこなしのポイントとなるが、やさしく詳細なマニュアルも付属するので、ユーザーのスキルアップは難しくないと思われる。

欲をいえば、もう少見かけ視界が広く、焦点位置の同じアイピースを付属させてほしい気もするが、価格を考えれば致し方ないことだろう。

福田社長

会場風景

挨拶をする(株)ミックインターナショナル社長の福田氏。天体望遠鏡の新機種発表会が行われるのはきわめて異例だ。 会場には20台のデモ機が用意され、集まったメディア関係者が自由に触れることができた。

 

巻頭まんが

付属のマニュアルには、一家4人が登場する「使いこなしマンガ」が載っていて、ETXの使い方を簡単に解説している。マンガのタッチには、どこかで見覚えがあるかも……。

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