日本カメラ博物館特別展「デジタルカメラ 現在に至る軌跡」

【2000年8月28日 日本カメラ博物館

日本カメラ博物館は、2000年10月24日(火)から2001年4月15日(日)の日程で、特別展「デジタルカメラ 現在に至る軌跡」を開催する。

デジタルカメラの歴史を代表する機種たち

上段左より:1986年製「キヤノン スチルビデオカメラ RC-701」
      1981年製「ソニー マビカ(試作機)」
      1999年製「富士写真フイルム ファインピックス PR21 プリンカム」
下段左より:1997年製「オリンパス キャメディア C-1400L」
      1996年製「カシオ QV-10A」
      1999年製「ニコン クールピクス950」

デジタルカメラの歴史は、約20年前の1981年、ソニーから磁気記録方式による電子スチルカメラ「マビカ(試作機)」が発表されたことに始まる。「マビカ」は市販にはいたらなかったが、その全く新しい写真システム――光を電子信号に変換するCCD(電荷結合素子)や磁気ディスクを採用――は大きな話題となり、各社とも研究・開発を本格的にスタートさせた。

その後1986年にはキヤノンから世界で初めて電子スチルビデオカメラ「RC-701」が市販――ただし、ボディーだけで39万円、システム一式では500万円にも達する高価格な製品であり、主に報道など業務用に用いられた――され、その後各社から多数の機種が発売された。電子スチルビデオカメラは、画像記録方式をデジタル方式に、画像記録媒体を半導体メモリーにした上で、銀塩カメラの画質に近づける改良が重ねられ、現在では「デジタルカメラ」として広く知られ、使われるようになった。

1995年には、38万画素と画素数こそ多くないが、当時としては破格の6万5千円という低価格をつけた普及型デジタルカメラ「QV-10」がカシオ計算機から発売され、大ヒットとなった。翌1996年には、機能はそのままで4万9800円にまで価格を下げた「QV-10A」も発売され、デジタルカメラの普及に貢献を果たした。

そして1997年ごろになると、半導体メモリーの低価格化、パーソナルコンピュータの普及、そして画像処理ソフトの発展に応じ、画像入力機器としてデジタルカメラは爆発的に普及していった。同時に、従来はプロフェッショナル向けとされてきた100万画素(メガピクセル)以上の高画質機が普及価格帯で次々と誕生していった。1997年発売の「オリンパス キャメディア C-1400L」は、画素数を高めた上で同社の銀塩一眼レフカメラ「Lシリーズ」に近いデザインと使い勝手を有し、銀塩カメラとデジタルカメラの間の違和感を少なくした機種であり、メガピクセル機初期を代表する製品といえるだろう。

普及機の高性能化――1999年3月末に発売された「ニコン クールピクス950」は、211万画素の高画素に加え、高性能光学3倍ズームレンズを搭載しながら、価格は12万5000円であった――が進む一方、報道などの業務用向けには、銀塩一眼レフカメラをベースにした高級デジタルカメラも開発されてきた。そのほとんどは100万円以上もするものだった。しかし、1999年9月末に発売された一眼レフデジタルカメラ「ニコン D1」は、プロフェッショナル使用にも十分満足する性能を持つ一方で、65万円という低価格を実現していた。この価格は、ハイアマチュアの手に十分届くものだった。

そんな中、1999年11月に発売された「富士写真フイルム ファインピックス PR21 プリンカム」(230万画素)は、インスタントフィルムプリンターを内蔵し、写したその場で複数のインスタントプリントを作成できるユニークな製品だ。デジタル写真とインスタント写真という、「写したものをすぐに見ることのできる」システム同士を組み合わせた製品として注目を集めた。

そして現在では、普及向けのデジタルカメラでも、かつての業務用機を上回る200万画素〜300万画素は当たり前となっている。また普及機種と業務用機種の性能差が少なくなるにつれ、業務用機種の低価格化も進んでいる。

今回の特別展「デジタルカメラ 現在に至る軌跡」は、このようなデジタルカメラの歴史を、周辺機器や記録媒体などの変遷とともにたどり、デジタルカメラの発展が今後の写真界全体の発展にどのように関わってゆくのかを考える機会だ。上で紹介した製品をはじめとする100機種以上の展示に加え、パネル展示などが予定されている。

また、写真家がデジタルカメラで撮影した作品を展示するコーナーや、毎週土曜・日曜の午後には実演で画像処理やプリントを楽しめるコーナーも設けられ、デジタルカメラで広がる新しい映像の世界を体験できる場も用意される。

[開催概要]


開催期間:  2000年10月24日(火)〜2001年4月15日(日)

開館時間:  午前10時〜午後5時 (実演コーナーは原則として土曜・日曜の午後)

休館日:   毎週月曜日(ただし、月曜日が祝日の場合は火曜日)
       年末年始は2000年12月28日から2001年1月4日まで休館

入場料:   一般300円、小・中学生100円
       (10名以上の団体割引料金:一般200円、小・中学生50円)

常設展等:  常設展として、「日本の歴史的カメラ」約300機種も展示
       また、博物館展示スペースの一部を日本の各メーカーに提供し、
       「日本カメラ新製品コーナー」も設けられる。

その他:   この特別展に出品される主要な製品を納めた図録を製作し、
       博物館にて販売予定

交 通:   日本カメラ博物館を参照。

問い合わせ先:日本カメラ博物館 担当:島貫、島、宮崎
       TEL 03-3263-7110