多くの銀河が誕生した時期は定説より早い?

【2000年8月18日 UniSci (2000/8/17)

イギリス・ダラム大学のチームが、宇宙には、これまで考えられてきたよりも早い時期に、すでに多数の銀河が存在していたという新たな証拠をつかみ、8月17日、イギリス・マンチェスターで開催されている国際天文学連合(IAU)の総会で発表した。

同チームは、カナリア諸島の4.2mのウィリアム・ハーシェル望遠鏡(イギリス・ドイツ・スペイン共同)と、スペインの3.5mのクルラ・アルト望遠鏡を用い、ハーシェル望遠鏡では赤色波長で、アルト望遠鏡では赤外波長でそれぞれ計数十時間の露光を行なった結果、赤方偏移が4から6程度の銀河がひじょうに多く写っていた。

赤方偏移とは、宇宙の膨張により遠方の天体からの光が引き伸ばされて赤くなる現象であり、値が大きいほど遠方の天体、つまり宇宙のより早い時期の天体の姿であるということを意味する。そして赤方偏移が4から6であるということは、約100億年前の天体の姿であるということに相当する。その時期、宇宙は現在の1/6程度の大きさであったと考えられている。

NASAのハッブル宇宙望遠鏡(HST)もそれぞれ120時間程度の超長時間露出により「ハッブル北ディープフィールド」および「ハッブル南ディープフィールド」と呼ばれる領域を撮影している。こちらは先ほどの地上望遠鏡の画像より遠方の天体までとらえているが、視野角は狭い。しかし、赤方偏移が5前後の銀河が多く見られる点では地上望遠鏡による画像と同様だった。

複数の観測から同様の結果が得られたことから、赤方偏移5前後の銀河が多く見られることは、全天に共通したことであると考えて良いと思われる。つまり、100億年前の宇宙には既に多数の銀河が存在していたということだ。これは、驚くべき新事実だ。

宇宙に多くの銀河が誕生した時期については諸説あるが、赤方偏移が1前後の約60億年前、宇宙が現在の半分程度の大きさであったころであるとする説がよく知られている。

だが4年前の1996年に撮影された、HSTとハーシェル望遠鏡による「ハッブル・ディープフィールド」の紫外線および青色光画像には赤方偏移2前後の銀河が多くとらえられていた。

その後、チャールズ・ステイデル氏らによるケック10m望遠鏡を用いた観測では、赤方偏移3〜4の銀河が数多く発見された。

そして今回、ダラム大学のチームは赤方偏移5〜6の銀河も多く存在するということを突き止めた。

ダラム大学のチームリーダー、トム・シャンクス博士はこう語っている。

「4年前我々は、我々が発見した赤方偏移2前後の銀河たちを《最後のフロンティア》と表現したものだ。なぜなら、それ以遠を観測した場合は、銀河の形成前の宇宙の姿を見ることになると考えていたからだ。そして今、さらに大きな赤方偏移を持つ銀河が多数存在することが発見された。我々はこれらの銀河たちをこう表現したいと思っている。《最後のフロンティアを超えて》と。」

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  • Beyond the Final Frontier!
    ダラム大学物理学部・銀河系外および宇宙論研究グループ・プレスリリース、英文、画像あり