チャンドラ、リニア彗星を観測。彗星からのX線放射の謎を解く

【2000年8月8日 Chandra Press Room CXC PR: 00-20 (2000/7/27)

NASAのX線宇宙望遠鏡「チャンドラ」が7月14日、リニア彗星(C/1999 S4)を2時間半にわたって観測し、彗星からのX線放射現象の謎を解くことに成功した。

チャンドラがX線でとらえたリニア彗星の核付近

上は、チャンドラの進化型CCD分光撮像器(ACIS)がとらえたリニア彗星。中央やや右の"Linear 1999 S4 nucleus"と記された十字マークが彗星の核の位置。左下向きの"To the Sun"と記された矢印が太陽の方向を示す。核から太陽の方向に少し離れた位置でX線放射が発生していることがわかる。

彗星の核は氷とチリから成る直径数kmほどの冷たい「汚れた雪玉」であり、低温のためX線放射は起こり得ないと思われていたが、1996年にX線観測衛星「ROSAT」が百武彗星からのX線放射を検出し、天文学者らを驚かせた。この不思議な現象を説明するために、いくつかのメカニズムが提案されてきたが、今回のチャンドラによる観測結果から、太陽風に含まれる酸素イオンと窒素イオンが、彗星を取り巻く主に水素から成る電気的に中性なガスに衝突する際にX線放射が発生していることがわかった。

チャンドラが観測を行なった7月14日は、7月12日に発生した太陽フレア現象の影響で、彗星付近を通過する太陽風が強くなっていたため、はっきりとしたX線放射が観測された。

チャンドラは、7月29日〜8月13日に再びリニア彗星を観測する予定だ。

画像提供:  NASA / SAO / CXC / STScI / Lisse