小惑星パラスによる恒星の掩蔽

【1999年8月3日 佐藤 勲 氏 ONM No.463】

8月1日発売の月刊天文9月号65ページにも掲載しましたが、来る9月26(日)と10月2日(土)に、小惑星(2)パラスによる恒星の掩蔽が連続して日本で見られます。 特に後者は好条件で、東北地方を中心とする多数の固定および遠征観測者による観測によって、パラスの詳しい大きさと形が明らかにされることが期待されます。

まず、9月26日(日)26h46m(JST)ごろ、パラス(8.9等)によるACT2381070(10.22等)の掩蔽が起こります。 パラスの直径は523kmと推定され、現象が起これば、最長18秒間にわたって減光が起こりますが、パラスの方が恒星より明るいため、減光はわずか0.3等級にしかなりません。 このため、眼視でこの現象を捕らえることはほとんど不可能で、比較的大口径の望遠鏡によるビデオ、光電管、CCD写真などによる客観的な観測が必要となります。

掩蔽帯は、関東から中国・四国地方を通っており、予報の精度が高いため、これらの地方で現象が見られることは確実です。 しかし、満月過ぎの大きな月があり、かつ低空のため、観測条件はあまりよくありません。 南東方向の開けた場所を選んで観測しましょう。 恒星の位置は、赤経07h07m26.7s, 赤緯-12゚09'50"で、おおいぬ座にあります。

掩蔽帯図掩蔽帯図
9月26日
GIF 128KB
935×1210

次に、6日後の10月2日(土)28h05m(JST)ごろ、パラス(8.8等)によるHIP035217(7.73等)の掩蔽が起こります。 現象が起これば、最長19秒間にわたって1.4等級の減光が起こります。 眼視観測でも注意深く観測すれば、捕らえられる減光度で、小望遠鏡でも十分観測可能な現象です。

掩蔽帯は、北海道南端から東北、北関東、北陸地方を通っており、予報の精度が高いため、これらの地方で現象が見られることは確実です。 しかも週末の現象であるため、これらの地方の固定観測者のみならず、東北地方まで遠征観測することを是非お勧めいたします。 観測地は、当日の天気予報を見て、晴れそうな場所を選びましょう。 恒星の位置は、赤経07h16m42.4s, 赤緯-13゚27'17"で、おおいぬ座にあります。 眼視観測のみならず、ビデオ、光電管、CCD写真などによる客観的な観測にも挑戦してみて下さい。 双眼鏡の場合には、防震装置付きのものがよく見えるようです。

掩蔽帯図掩蔽帯図
10月2日
GIF 143KB
935×1210

さて、観測方法ですが、眼視観測の場合は、電話時報を受信し、時報と現象が起こった時の声を録音して、後で再生して潜入と出現の時刻を0.1秒単位で求めます。 現象を見てから声が出るまでの反応時間は、適当に見積もって補正します。 眼視観測は信頼性が低いので、近くの人とペアを組んで2人以上で観測すると、信頼性が向上します。

ビデオ観測の場合は、できればI.I.や高感度の白黒ビデオを使用し、時報を同時録音します。 周囲の星が映るような倍率で観測すると、雲の通過による減光を区別することができます。 まずは、9月26日の現象で練習し、10月2日の現象でその成果を発揮するように計画的に準備をしましょう。

この情報は、お近くの観測者にも伝え、なるべく多くの観測が得られるよう御協力下さい。 現在、10月2日の現象を東北地方周辺で観測される方を募集しております。観測者の分布が最適な配置になるよう、移動観測可能な方は、是非御協力下さい。

観測報告は、現象が起こらなくても、曇っても、観測地の詳しい経緯度や高度、望遠鏡、観測方法、観測状況などを添えて、是非佐藤勲氏(satoois@cc.nao.ac.jp)まで御報告下さい。 結果は、11月13〜15日に東北大学で開催される日本惑星科学会で発表する予定です。