打ち上げから36年の探査機、民間の手で再利用

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【2014年8月11日 Space.com

1978年にNASAの太陽探査機として打ち上げられ、民間の運用により復活した「ISEE-3」。11日未明に月のそばを通過し、新たな惑星間ミッションを開始した。


月のそばを通過するISEE-3

月のそばを通過するISEE-3のイメージ図。クリックで拡大(提供:Mark Maxwell/ISEE-3 Reboot Project)

1978年8月12日に打ち上げられた探査機「ISEE-3」が、本日8月11日3時15分(日本時間)に月面から1万5600kmの距離を通過し、地球軌道より外側の惑星間空間へと向かって出発した。

ISEE-3は、打ち上げ後最初の4年間は太陽‐地球間のL1点で太陽風の観測を行い()、1980年代には月と地球周辺の複雑な軌道を周りながらジャコビニ・チンナー彗星(21P)とハレー彗星(1P)を接近探査した。彗星の尾の中を通過した探査機はこれが史上初だった。その後、地球軌道に近い太陽周回軌道で太陽コロナ質量放出(CME)の観測を細々と行っていたが、1999年にNASAによる運用が終了した。

2010年代に入り、観測機器が生きている探査機をふたたびよみがえらせようと、無線や航空宇宙の有識者らが協力して再運用にのりだした。NASAに残っていた紙の資料をデジタル化し、16万ドルの寄付を集め、旧式の探査機に対応する通信機を新たに製作した。

探査機が地球に接近した今年5月、「ISEE-3再起動プロジェクト」はプエルトリコのアレシボ天文台を介して双方向通信に成功した。燃料タンクの圧力低下のため、残念ながらブレーキをかけて地球周辺に留めておくことはできなかったが、惑星間空間観測という新たなミッションが開始される。

注:「太陽‐地球系のL1点」 地球からおよそ150万km離れた、太陽〜地球間で重力がつりあう位置。ISEE-3を初めとして多くの太陽探査機がこの軌道を採っている。

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