広範囲な温度変化を起こしてきたY型星

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【2014年8月7日 Royal Astronomical Society

表面温度が摂氏100〜150度しかない低温の天体「WISE J0304-2705」が発見された。誕生間もない若い頃には2800度以上と恒星程度に高温で、長い時間をかけて冷えてきたと考えられている。


極端な温度変化を起こしてきたY型星「WISE J0304-2705」の想像図(4段階)

極端な温度変化を起こしてきたY型星「WISE J0304-2705」の想像図(4段階、左から右へと進化)。クリックで拡大(提供:John Pinfield, 2014.)

WISE J0304-2705は、ろ座の方向約33〜55光年に位置する、星のスペクトル型のうちもっとも低温で暗い分類のY型星だ。現在までに発見されているY型星はたった20個で、中でもWISE J0304-2705のスペクトルは独特なものだという。

スペクトルから天体の表面温度を調べたところ、摂氏100〜150度と、地球と金星の中間ほどしかないことがわかった。質量は木星の20〜30倍と見積もられている。

「観測によって組成と年齢がわかり、この天体は天の川銀河内において年老いた部類に入るものであることがわかりました。かつては表面温度が数千度という高温だった天体が、今ではすっかり低温に下がっており、劇的な温度の進化があったことが示されました」(英・ハートフォードシャー大学のDavid Pinfieldさん)

この天体が年老いた古い天体である場合、4つの段階を経ると考えられている。誕生から最初の2000万年の間には、太陽にもっとも近い星であり赤色矮星に分類されるプロキシマケンタウリと同様、温度が2800度以上あった。続いて約1億年後、温度は1500度まで下がる。天体が数十億歳になると温度はさらに下がって1000度ほどになり、メタンガスと水蒸気に覆われる。そしてさらに数十億年後までに、温度は下がり続けて変化の最終段階が訪れ、現在観測されている100〜150度にまで下がったと考えられている。

そのような広範囲な温度変化を見せたのは、WISE J0304-2705が準恒星であるためだ。たとえば太陽は水素の核融合反応によってエネルギーを生み出し数十億年間輝き続けているのに対し、準恒星は質量が小さいため反応が起こらない。つまり、温度を一定に保つためのエネルギー源がないので温度が下がり、暗くなることは避けられないのだ。