偶然重なった、116億光年と99億光年彼方の銀河

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【2013年4月2日 愛媛大学

すばる望遠鏡による観測で、116億光年彼方の銀河が、その手前にほぼ重なって見える99億光年彼方の銀河の重力レンズ効果を受けて本来よりも明るく見えていることが突き止められた。手前の銀河の質量が見積もられ、増光の度合いなどが調べられた。


銀河の像と、2つの銀河が重なっている様子

(左)ハッブル望遠鏡が撮影した「LAE 221724+001716」。(右)赤の部分が奥側の銀河、青が手前側の銀河。クリックで拡大(提供:愛媛大学)

重力レンズの模式図

重力レンズの模式図。下の図は今回の研究対象天体で、奥側の銀河が重力レンズの影響で位置がずれて見える様子を表す。クリックで拡大(提供:愛媛大学)

画像は、みずがめ座の方向116億光年彼方の銀河と99億光年彼方の銀河が偶然重なって勾玉(まがたま)のような形に見える天体だ。初めは1つの銀河と考えられていたが、手前の銀河の存在が明らかになったことから、奥の銀河が手前の銀河の重力の影響(重力で光が曲げられる「重力レンズ効果」)で本来よりどのくらい明るく見えているかという研究が行われた。

愛媛大学などの研究チームがすばる望遠鏡の観測データから見積もったところ、99億光年彼方の銀河の質量は太陽10億個分で、私達の天の川銀河の1%程度となった。これほど質量が小さいことや、銀河同士の距離、位置角など既知の情報を加味すると、重力レンズ効果によって奥の銀河を増光させる度合いは最大でも1.2倍くらいしかないことがわかった。

増光の度合いがわかれば奥にある銀河の本来の明るさがわかり、宇宙のどの時代にどれだけの星ができあがっていたのかという銀河の形成過程がより正しく理解できる。今回のように形成途中の銀河が偶然奥の天体と重なって見える確率は0.5%程度で、決して無視できるほど小さな値ではない。しかし仮に重なって重力レンズ効果により増光があったとしても、奥の銀河の明るさを見積もる上ではそれほど大きく影響しないことが確認できた。

今回の成果を卒業研究として発表した中広祐也さん(愛媛大学理学部4回生)は、「卒業研究が論文になるとは思いませんでした。今回はたまたま見つかった1例についての解析でしたが、このような天体は他にも見つかっています。それらの重力レンズ効果も調べ、宇宙の謎を解き明かしたい」と意気込みを語っている。