遠ざかるギャラッド彗星を観測

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【2012年4月16日 NASA

昨年から夜空で注目の的となり、ふたたび太陽系の彼方に向かいつつあるギャラッド彗星(C/2009 P1)。天文衛星による紫外線などの観測で、彗星の活動を詳しく探るための追跡が行われようとしている。


4月14日のギャラッド彗星

2012年4月14日に撮影されたギャラッド彗星。2つの星にはさまれた緑色の天体。クリックで拡大(提供:南砺龍吉さん。投稿画像ギャラリーより)

スウィフトで撮影されたギャラッド彗星

衛星スウィフトで撮影されたギャラッド彗星。左側の赤っぽい色はダストが反射する太陽光、右の青っぽい色は水の存在を示す紫外線。クリックで説明つき拡大(提供:NASA/Swift/D. Bodewits (UMD) and S. Immler (GSFC) and DSS/STScI/AURA)

ギャラッド彗星(C/2009 P1)は、ゴードン・J・ギャラッドさんが2009年8月にオーストラリアのサイディング・スプリング天文台で発見した。太陽系のはるか外側を取り囲む彗星の故郷「オールトの雲」と呼ばれる領域から、初めて太陽の近くにまでやってきたと考えられている。2011年12月下旬に近日点(太陽にもっとも近づく点)を通過し、2012年3月はじめには地球から約2億kmにまで最接近した。現在はおおぐま座とやまねこ座の境界付近を通過中で、空の条件が良ければ中型の双眼鏡でも見ることができる(画像1枚目)。

彗星の正体は凍ったガスとダスト(塵)が集まった塊で、「汚れた雪玉」と形容されることがある。太陽から3天文単位(1天文単位は太陽〜地球の平均距離)より太陽系の内側に入ってくると、太陽の熱で水の氷が水蒸気に気化してガスやダストが放出される。こうした物質が太陽光を反射して、彗星が見えるのだ。

こうした変化が起こる境界線は「雪線(snow line)」と呼ばれるが、ギャラッド彗星の場合はこの雪線の内側に入る前からガスやダストを大量に放出しはじめていた。これは水の氷以外の物質によるものと考えられており、彗星が遠ざかる今、雪線を出た後の様子を観測することで、この謎を探ろうとしている。雪線より外の彗星を観測研究するのは極めて珍しいことだ。

彗星は水以外にも、一酸化炭素や二酸化炭素といったガスの氷を含んでいる。これらは水より気化する温度が低いため、雪線から外側の領域における彗星の活動の主な原因と目されているが、それ以外に、水の氷の形態の変化も関わっている可能性もある。

観測を行うNASAの宇宙望遠鏡「スウィフト」は遠方宇宙で起こるガンマ線バーストが主なターゲットだが、搭載された紫外線・可視光望遠鏡で、彗星のダストが反射する太陽光や水の存在を示す水酸基、シアン化物(CN)、一硫化炭素(CS)などのガス分子を検出することができる。

スウィフトは、火星軌道を通過したばかりのギャラッド彗星を4月1日に観測した(画像2枚目)。詳しい分析結果はこれからだが、プールを30分で一杯にする勢いで水を放出していると見積もられている。

観測は、太陽から5.5天文単位の距離に達する2013年4月まで8回実施される予定だ。太陽系の彼方に飛び去る彗星の組成や化学変化を見ていくことで、彗星活動や起源についての理解が深まることが期待される。

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