宇宙の加速膨張の発見で米研究者ら3人がノーベル物理学賞を受賞

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【2011年10月5日 ノーベル財団

10月4日、2011年のノーベル物理学賞が、遠方の超新星観測により宇宙の加速的な膨張を発見した研究者3名に贈られることが発表された。


ノーベル物理学賞を受賞した3氏

ノーベル物理学賞を受賞した3氏。左からPerlmutter氏、Schmidt氏、Riess氏。クリックで拡大(提供:Perlmutter - Lawrence Berkeley National Lab/Schmidt - Belinda Pratten, Australian National University/Riess - Homewood Photography)

137億年前のビッグバン以来私たちの宇宙が膨張し続けていることは、1929年からわかっていたが、その膨張の勢いが宇宙に存在する物質の重力によって衰えるどころか、むしろ加速しているということを示したのが今回の受賞者たちの功績だ。

受賞者は、Saul Perlmutter氏、Brian P. Schmidt氏、Adam G. Riess氏の3名で、Schmidt氏とRiess氏は共同チームとしての受賞となる。

この発見には、Ia型超新星と呼ばれる天体がかぎとなった。Ia型超新星とは、白色矮星と呼ばれる星の燃えかすのような高密度の天体が、核反応が暴走することで爆発して明るく見える天体だ。ピーク時の明るさがどれも同じであるため、地球からの見かけの明るさと比較することで距離を測定することができる。

求められた距離(光が届く時間がかかるので、遠くほど過去を見ることになる)と、天体が観測者から遠ざかるスピードが速いほど波長が長く伸びる「赤方偏移」の測定値を組み合わせることで、宇宙の時代ごとの膨張スピードがわかる。

3氏のチームは1998年、この原理を利用して、宇宙空間が加速的に膨張していることの観測的な証拠を見出した。もともとは膨張速度の衰えを計測するつもりで観測を行っていたので、この研究結果は当時衝撃的なものだった。

宇宙が加速度的に膨張していることの説明として、物体同士を遠ざけ空間を広げる斥力(物質同士を引き合わせる「引力」とは反対に、物質同士を引き離す力)を生む「暗黒エネルギー」が提唱されており、宇宙の全エネルギーの約4分の3を占めているとする説が現在主流である。

Saul Perlmutter
1959年、米・イリノイ州生。カリフォルニア大学バークレー校博士号。「超新星宇宙論計画」代表。ローレンス・バークレー国立研究所およびカリフォルニア大学バークレー校宇宙物理学教授
Brian P. Schmidt
1967年、米・モンタナ州生。アメリカ・オーストラリア国籍。ハーバード大学博士号。「遠方超新星捜索チーム」代表。オーストラリア国立大学特等教授
Adam G. Riess
1969年、米・ワシントンDC生。ハーバード大学博士号。ジョンズ・ホプキンズ大学および宇宙望遠鏡科学研究所宇宙物理学教授

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