若く明るい銀河を観測して暗黒エネルギーの存在を検証

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【2011年5月26日 NASA

暗黒エネルギーは宇宙膨張を加速させている力として、その存在が予測されている。NASAの探査機とアングロ・オーストラリアン望遠鏡の共同観測により、若く明るい銀河を用いて暗黒エネルギーの存在が検証された。


(重力場と暗黒エネルギー場のイメージ図)

重力場と暗黒エネルギー場のイメージ図。下の緑の格子が重力場、上の紫の格子が暗黒エネルギー場のイメージ。重力場は重力のある天体がある場所で大きな変化があるが、暗黒エネルギーは重力のある天体とは無関係に一様である様子を表す。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech )

宇宙を構成するもののうち、原子や電子など「バリオン」と呼ばれる普通の物質はおよそ4%にしか過ぎず、正体不明だが重力的な影響を与える暗黒物質と呼ばれるものが22%、宇宙の膨張に関係していると考えられる暗黒エネルギー(ダークエネルギー)が74%を占めると考えられている。暗黒エネルギーの正体はほとんどわかっていないが、宇宙全体に一様に作用し、宇宙膨張を加速させているものである。

豪スウィンバーン工科大学のChris Blake氏らは、暗黒エネルギーがどのような性質を持っているのかを見るために、NASAの銀河進化探査衛星GALEXとアングロ・オーストラリアン望遠鏡を用いて遠方にある銀河の距離のパターンについて観測を行った。

すでに超新星爆発を利用した宇宙の加速膨張については調べられているが、この結果を確かめる意味も含め、超新星爆発の代わりに非常に明るく若い銀河を用いて観測を行った。まずGALEXで宇宙の3次元銀河マップを作成し、その中から若く明るい銀河を探し出した。次にアングロ・オーストラリアン望遠鏡を用いてこの銀河の観測を行い、銀河そのものの情報を集めるとともに、銀河同士の距離のパターンについて調べた。

誕生から間もない初期の宇宙は超高温・超高密度で、電子や光、クォークといった素粒子が存在するスープ状態だったと考えられている。そのスープ中に存在していた音波は、宇宙の膨張に伴ってその波の間隔を広げていき、それが銀河の形成される間隔に影響を与えていると考えられている。これを利用して様々な距離(つまり様々な年代)にある銀河同士の距離がどのように変化しているのかを調べることで、暗黒エネルギーの影響が時間によってどのように変化しているのかをさぐった。

その結果、超新星爆発での検証と同じように、宇宙の膨張速度は徐々に速くなっていることがわかった。銀河団がどのように形成されてきたのかを様々な時間で調べれば、暗黒エネルギーの斥力の強さを測ることもできる。

これまで行われてこなかった方法で宇宙膨張の性質を調べることで、謎に包まれている暗黒エネルギーの存在が確かなものとなるかもしれない。