ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた干潟星雲の中心領域

【2010年9月29日 ESA HST

ハッブル宇宙望遠鏡(HST)が干潟星雲(M8)の中心領域をとらえた。若い星からの強烈な放射によってガスやちりの雲が侵食されたり拡散させられたりした、荒々しい光景が広がっている。


(HSTによる干潟星雲(M8)の中心領域の画像)

HSTによる干潟星雲(M8)の中心領域。クリックで拡大(提供:NASA, ESA)

HSTACSカメラが干潟星雲(M8)の中心領域をとらえ、若い星の強力な放射によって複雑に形づくられているガスやちりの雲の姿を見せてくれた。

この星雲の名前は、星雲を横断するちりの筋(暗黒星雲)が干潟のように見えることに由来する。筋模様は広視野画像には見えるが、HSTによるこのクローズアップ画像には見られない。代わりに、うねった煙のような不思議な構造や砂地のような模様が見えている。

干潟星雲は、いて座の方向約4000〜5000光年の距離に位置する星形成領域で、大きさは約100光年と巨大だ。そこでは水素ガスの雲がゆっくりと収縮して、新たな星が生まれている。誕生した星からの紫外線によって周囲のガスが照らされ、画像中その影が赤黒く見えている。渦を巻く煙や岸辺のように見えるのは、紫外線放射によってガスが侵食されたり拡散させられたりしたためである。

近年、干潟星雲の観測から、ガス雲から原始星へ物質が降着して星形成が進んでいることを示す確証が得られるようになってきた。

周囲に円盤が残っている若い星からは、時折円盤に垂直な両極の方向にジェットが噴出される。このようなジェットを伴う天体はハービッグ・ハロー天体と呼ばれており、星形成活動の活発な分子雲や、そこに付随する電離水素領域などの中にのみ見られる。過去5年間の観測で干潟星雲内にもハービッグ・ハロー天体が発見されており、水素の豊富な領域で起きる星形成に関する理論を強く支持するものとなっている。