タイタンの赤道付近に大規模な雲

【2009年8月21日 Gemini Observatory

土星の衛星タイタンで、赤道付近に大規模な雲が発生するようすが初めて観測された。極寒で乾燥した砂漠のような気候でありながら、タイタンに河川のような地形が見られるのは、たまに液体メタンの豪雨が降るからかもしれない。


(2008年4月にジェミニ北望遠鏡がとらえたタイタンの雲の画像)

2008年4月にジェミニ北望遠鏡がとらえたタイタン。明るい部分が雲。クリックで拡大(提供:Gemini Observatory/AURA/Henry Roe, Lowell Observatory/Emily Schaller, Institute for Astronomy, University of Hawai‘i)

2005年1月、NASAESAが開発したホイヘンス(土星探査機カッシーニの子機)は、土星最大の衛星タイタンにの赤道付近に着陸した。

下降中、ホイヘンスは小さな峡谷や河川のような地形があるのをとらえた。タイタンの赤道領域は砂漠のようにとても乾燥しているはずだという予想に反して、液体が流れている証拠が見つかったのである。タイタンの温度は摂氏マイナス178度なので、水は岩石のように凍っているが、天然ガスとして知られるメタンは液状になる。そのメタンが地下から染み出て地表を流れるという仮説が立てられた。

米・ハワイ大学などの研究チームは、ハワイのマウナケア山頂にあるNASAの赤外線望遠鏡(IRTF)とジェミニ北望遠鏡で、タイタンを観測してきた。

観測開始から8年間、赤道付近ではっきりとした雲が見つかることはなかった。しかし、2008年4月に南緯30度付近で雲が形成されると、数日後には赤道と南極付近にも雲が発生した。大気の移動などによって、遠隔的に影響があったようだ。赤道付近の雲は急成長して、インドの面積に匹敵する300万平方kmの範囲を覆うほどとなった。

過去数年間、中緯度および極域における雲の形成は何度も観測されていたが、赤道付近に大規模な雲が発生するようすが見られたのは、初めてのことである。ホイへンスがとらえた地形にメタンの雨が関係している可能性を高める結果となった。