星団の構成はどこでも同じ

【2009年6月12日 ESO

天の川銀河の中心付近に位置するアーチーズ星団には、近くに超巨大ブラックホールが存在するなどの過酷な環境にさらされながら、若い星が極端に高い密度でひしめいている。意外にも、低質量星と大質量星の割合は、密度の低いほかの星団と同じであるらしい。


(VLTによるアーチーズ星団の画像)

VLT干渉計がとらえたアーチーズ星団。クリックで拡大(提供:ESO/P. Espinoza)

(天の川銀河の中心領域の画像)

Digitized Sky Survey 2による天の川銀河の中心領域。アーチーズ星団はほぼ中央に位置するが濃いちりに隠されて見ることができない。クリックで拡大(提供:ESO, Digitized Sky Survey 2 & S. Guisard)

いて座の方向約2万5000光年の距離に位置する「アーチーズ(Arches)星団」は、250万歳以下の若い星が極端な密度でひしめいている。星団は天の川銀河の中心付近に位置しており、超巨大ブラックホール、ガスや星々の影響を強く受ける過酷な環境にある。

ヨーロッパ南天天文台(ESO)のVLTが、アーチーズ星団を観測した結果、意外な成果が得られた。アーチーズ星団における低質量と大質量の星の数の比率が、天の川銀河内の他の星団と同じであることが明らかとなったのである。

一般に星団では、小質量星に比べて大質量星の方が数が少なく、その比率はどこも同じであることが研究からわかっていたが、何年もの間、アーチーズ星団は例外と思われてきた。

研究チームのPable Espinoza氏は「アーチーズ星団のような極端な環境での星の形成が、太陽系の近くのような静かな環境と同じように進むとは、まず想像できないでしょう」と話している。VLTの観測によって、星の形成は、星団の密度に関係なく普遍的に同じであることが示されたのである。

アーチーズ星団の大きさは約3光年だが、1立方光年(1辺が1光年の立方体)の中に1000個以上も大質量の若い星が含まれている。この密度は太陽系付近の約百万倍もあり、これまでに知られている若い星でできた星団の中でもっとも高いこともわかった。さらに、星団の総質量は太陽の3万倍と、これまでの予測以上であることも明らかとなった。

なお、星団をとらえた画像中で、最大の星の質量は太陽の120倍だった。このことから研究チームは、130倍以上の質量を持つ星が存在したとしたら、寿命は250万歳以下であり、通常の大質量星と違って、超新星爆発を起こさずに一生を終えると結論づけている。