人工衛星どうしの衝突事故、初めて発生

【2009年2月13日 CBS News

2月11日午前2時(日本時間)ごろ、米国の商用衛星通信システム「イリジウム」の衛星1機が機能停止に陥った。運用を終了していたロシアの通信衛星と衝突したものとみられ、軌道上に大量のデブリ(宇宙ごみ)がまき散らされたことが懸念される。


衝突直前の衛星

日本時間11日午前1時55分、衝突直前の両衛星。クリックで拡大。午前1時10分から56分にかけてのアニメーションはこちらから(GIFアニメーション、1.8MB)(ともにステラナビゲータ Ver.8で再現)

運用を終えた人工衛星やその破片はデブリ(宇宙ごみ)と呼ばれ、宇宙開発において大きな問題となっている。軌道がわかっていて追跡可能な天体だけでも1万個に達しており、観測が困難な直径10cm未満のものも含めれば、数はさらに多い。軌道上の物体は秒速数kmで動いているため、どんなに小さなデブリでも他の人工衛星などに与える損害は大きい。

NASAの関係者が米国の通信社CBSの取材に答えたところによると、イリジウム衛星に衝突したのは、1993年に打ち上げられたロシアの通信衛星「コスモス2251」。約10年前に運用を停止して軌道を周回し続けていた。今回の衝突によって、少なくとも600個のデブリが軌道にまき散らされたようだ。

イリジウムは、地球を取り囲むように高度780kmの軌道に配置された66機の人工衛星を用いて、世界のどこでも通話ができる携帯電話サービス。同サービスを運営する米・イリジウム社は、今回の衝突による損害は最小限に抑えられているとしている。1か月以内に、別の軌道で待機している予備のイリジウム衛星を移動するという。

「(どちらの責任であるかと言えば)ただ2つの衛星が衝突しただけです。軌道上には優先権もなければ、管制官もいません。どこから何が向かってくるか知り得ないのです」と語るのは、デブリを監視するNASAジョンソン宇宙センターの科学者Nicholas Johnson氏。「これまで小さな人工天体どうしの衝突は3件ありました。残念なことに、今回初めて大きな人工衛星どうしが衝突したわけです」

今後懸念されるのは、衝突で生じたデブリの行方だ。国際宇宙ステーションやスペースシャトルが活動するのは高度400km付近であり、被害が発生する可能性は極めて小さい。しかし、Johnson氏は小さなデブリの中にはすでに低空軌道まで達したものがあるかもしれないと指摘し、今後監視を続けていく必要性を強調している。