銀河より先に成長した超巨大ブラックホール

【2009年1月9日 NRAO

約128億光年のかなたに存在する銀河の観測で、銀河のバルジと銀河の中心に存在する超巨大ブラックホールの質量が計測された。その結果から、銀河よりブラックホールの方が先に成長を始めた可能性が示された。


(左)SDSSと(右)超大型電波干渉計(VLA)によるクエーサーJ1148+5251の画像

SDSS(左)と超大型電波干渉計(VLA)(右)が撮影した、約128億光年の距離にあるクエーサーJ1148+5251。クリックで拡大(提供:NRAO/AUI/NSF, SDSS)

銀河とその中心に存在する超巨大ブラックホールに関する近年の研究で、超巨大ブラックホールの質量と、銀河のバルジ(銀河の中心部分にある、球状にふくらんで星やガスが分布している領域)の質量とが、ある一定の関係にあることが明らかになっている。

超巨大ブラックホールとバルジの質量の比は、銀河の年齢や大きさにかかわらず大部分の銀河でほぼ同じで、超巨大ブラックホールの質量は、バルジの約1000分の1である。

米・カリフォルニア工業大学のDominik Riechers氏は「このような一定の比率は、超巨大ブラックホールとバルジとが、成長過程で互いに影響を及ぼしあっていることを示しています。問題は、どちらか一方が先に成長するのか、それとも、最初からいっしょに成長するのかという点です」と話している。

その疑問に対する1つの答えが、国際的な研究チームによる超大型電波干渉計(VLA)を使った観測から示された。

研究チームに参加した米国国立電波天文台(NRAO)のChris Carilli氏はその結論を、今年1月に米・カリフォルニア州で行われた米国天文学会の講演の中でこう話している。「どうやら、超巨大ブラックホールが先のようです。証拠は集まってきています」

同じく研究チームに参加した、独・マックスプランク研究所のFabian Walter氏は「わたしたちは、ついにビッグバンからたった10億年という初期宇宙に存在する数個の銀河について、バルジと超巨大ブラックホールの質量を計測することができました。その結果、初期宇宙では、現在と違って、バルジに対して超巨大ブラックホールの質量の方がはるかに大きいことがわかりました。これは、ブラックホールの方が先に成長し始めたことを示しています」と話している。