克明に描かれるカシオペヤ座A

【2009年1月8日 Chandra Press Room

NASAのX線天文衛星チャンドラは8年間にわたって超新星残骸カシオペヤ座Aを観測してきた。その成果は動画や3次元モデルなどとして現れており、見やすいだけでなく研究の進展にも貢献している。


動画を構成する4枚の静止画像

カシオペヤ座Aの動画を構成する4枚の静止画像(左上2000年、右上2002年、左下2004年、右下2007年)(提供:NASA/CXC/SAO/D.Patnaude et al.)

天文用に改良された医療用の画像プログラムで作成したカシオペヤ座Aの画像

医療用プログラムで描かれたカシオペヤ座A。緑はおもに鉄、黄色はアルゴンとケイ素、赤は冷えた物質に相当する。クリックで拡大(提供:NASA/CXC/MIT/T.Delaney et al.)

カシオペヤ座Aは約330年前に爆発したと考えられており、天の川銀河内の超新星残骸としては若い部類に入る。超新星爆発が星間ガスに重元素をまき散らし、加熱して、新しい星を誕生させるしくみを理解する上で、カシオペヤ座Aなどの残骸は手がかりとなる。

1枚目の画像は、チャンドラが2000年、2002年、2004年、2007年にそれぞれ撮影したカシオペヤ座Aの姿。とらえたX線のエネルギーが大きい順に青、緑、赤の疑似カラーが割り当てられている。

米・スミソニアン天体物理観測所のDaniel Patnaude氏らは、これらの画像から動画を作成し、残骸の膨張速度を調べた。すると、現在の理論モデルに比べて膨張が遅いことがわかった。これは爆発エネルギーの約30パーセントが宇宙線の加速に使われたためと見られている。

Patnaude氏は、「これまでチャンドラを通してカシオペヤ座Aを観察した時間は、全過程のごく一部ですが、それでもかなりの見ものでした」と話している。

一方、米・マサチューセッツ工科大学のTracey Delany氏らは、チャンドラのほかにNASAの赤外線天文衛星スピッツァーや地上の望遠鏡による観測データを用いて、カシオペヤ座Aの3次元モデルを作った。この研究は米・ハーバード大学の「天文・医療プロジェクト」と連携することで実現した。2枚目の画像は、医療用に開発されたプログラムで描かれたカシオペヤ座Aの姿だ。

3次元モデルからは、残骸の外層が球状である一方、内側は平べったい構造であることがわかった。これまで、残骸中の物質が煙やジェットのように噴き出している例は知られていたが、その噴出が実際には幅のある円盤状であることは今回初めて明らかになった。

ハーバード大学で、天文・医療プロジェクトを率いるAlyssa Goodman氏は「私たちは天文学と医学の両分野において3次元的可視化技術の向上を目指しています」と述べている。「カシオペヤ座Aは、私たちが思い描いていたとおりの成果です」