1つの恒星に、3つの「巨大地球」

【2008年6月24日 ESO Science Release

質量が地球の数倍程度の系外惑星を、欧州の研究チームが相次いで見つけた。そのうち3つは、同じ1つの恒星を回っている。これまで、系外惑星といえば木星のような巨大惑星ばかりが発見されてきたが、実際には地球規模の惑星の方が多く存在していることを、一連の研究は示しているという。


(HD 40307系の想像図)

HD 40307系の想像図。クリックで拡大(提供:ESO)

1995年にスイス・ジュネーブ大学のMichel Mayor氏とDidier Queloz氏が初めて系外惑星を発見して以来、その数は年々増え続け、現在はおよそ300個が知られている。そのほとんどが、木星や土星のような巨大惑星。統計によれば、この規模の惑星は14個の恒星につき1個の割合で存在するという。

だが最近、高精度の機器の登場や粘り強い観測が実を結んだ結果として、質量が地球の数倍程度の小さな惑星(木星の質量は地球の約318倍)が見つかりはじめた。質量が地球より大きく、天王星や海王星(ともに地球の15倍前後)より小さな系外惑星は、「スーパー・アース(大きな地球型惑星)」と呼ばれている。

そのスーパー・アースが、1つの恒星のまわりに3つも見つかるという注目すべき観測結果が発表された。Mayor氏が率いる欧州の研究チームによれば、その恒星はがか座の方向約42光年の距離にあって太陽よりわずかに軽い「HD 40307」である。「HD 40307 b」「HD 40307 c」「HD40307 d」の符号がついた3つの惑星は、いずれも質量が地球の10倍未満で、太陽系で言えば水星よりもはるかに内側の軌道を回っている(記事末尾の表を参照のこと)。

惑星の検出には「ドップラー法」が使われた。惑星の回転に伴って中心の恒星もぶれるため、公転と同じ周期で地球に近づいたり遠ざかったりする。その結果恒星のスペクトルが変動するので、惑星自体は見えなくても存在が確認できる。これは自分よりはるかに軽い砲丸を振り回すハンマー投げの選手の体が、軸足を中心に大きく回転していることに例えられる。しかし、HD 40307の場合、惑星の質量は恒星の10万分の1ほど。「ぶれ」の速度は人間が走る程度で、天文学的にはあまりに小さい。

研究チームが観測に使用したのは、ヨーロッパ南天天文台(ESO)のラ・シーヤ天文台3.6メートル望遠鏡に備え付けられた分光器「HARPS」。ドップラー法による惑星発見のために設計された同装置で、HD 40307は足かけ5年もの間観測されていた。

同チームはこのほかにも、恒星HD 181433のまわりを9.5日で回るスーパー・アース(質量は地球の7.5倍)などの発見を発表した。一連の観測により、質量が地球の30倍(木星の0.1倍)以下で公転周期50日未満の系外惑星候補が、全部で45個も浮かび上がったという。統計上、3個の恒星につき1個の割合で、こうした惑星が存在することになる。

「これは明らかに氷山の一角に過ぎません」とMayor氏は指摘する。今回のように公転周期が短い惑星は、その分検出しやすいのだ。「すべての恒星に惑星は存在するのか、存在するとしたら何個ずつなのか? まだ答えはでてないかもしれませんが、答えに向かって大きく前進していることは間違いありません」

研究チームの一員でジュネーブ大学のStéphane Udry氏は次のように述べている。「別のタイプの惑星も、まだ多く存在していそうです。スーパー・アースや海王星程度の質量で、公転周期がもっと長い惑星もあるでしょう。それだけでなく、いまだ検出できない地球型惑星が潜んでいる可能性も高いです。すでに知られている木星型惑星たちを加えれば、おのずと惑星は至るところに存在する、という結論に行き着くことでしょう」

HD 40307の惑星のデータ
惑星名 質量(地球比) 公転周期(日)
HD 40307 b 4.2 4.3
HD 40307 c 6.7 9.6
HD 40307 d 9.4 20.4

各惑星の質量は、地球で割った数値。

ステラナビゲータ Ver.8で系外惑星の位置を表示

ステラナビゲータ Ver.8では、今回発見された系外惑星が存在する方向を星図に表示させることができます。6月24日現在で259個の「惑星の存在が確認された恒星」を追加天体として「コンテンツ・ライブラリ」で公開しています。ステラナビゲータ Ver.8をご利用の方は、ステラナビゲータの「コンテンツ・ライブラリ」からファイルをダウンロードしてください。