皆既月食中に月面がピカリ

【2008年2月26日 George's website

皆既月食中に、月面に何かが衝突したかもしれない。アメリカのアマチュア研究者が、その閃光の画像を自身のウェブサイトで公開した。これが本当なら、初の月食中の月面衝突閃光であるが、現段階で断定することはできない。


(月面衝突閃光らしい光をとらえた月面画像)

皆既中の月面衝突閃光として公開された画像。クリックで拡大(提供:George Varros)

皆既月食中に、月の西に位置する「嵐の大洋」で0.1秒ほどの閃光が観測された。観測したのはアメリカのアマチュア研究者George Varrosさん。過去に月面衝突閃光を検出した実績をもち、NASAのしし座流星群国際航空機観測ミッション(Leonid MAC)にも参加経験があるベテランの流星観測者だ。観測地はアメリカ東部のメリーランド州マウントエアリーで、口径20センチメートルの反射望遠鏡と超高感度CCDカメラヘッドを組み合わせた観測システムを用いてビデオ観測を行ったところ、皆既中の2月21日03時19分57秒(世界時)、ビデオ映像の3フレームに閃光が写ったとして、自身のウェブサイトで公開した。

月面衝突閃光は、月面に流星体などの小天体が衝突した際の発光現象であると言われている。その発光メカニズムには不明な点も多く、観測例は貴重な研究材料となる。月面衝突閃光はいつどこで起こるか予測不可能であるが、観測は通常、月の夜の側を監視する。太陽光が当たる月の昼の側は、月面が明るすぎて閃光を検出できないためだ。満月は月全面が明るいため監視できないが、月食のときだけは、月が地球の影の中に入って暗くなるため、月の昼の側であっても閃光を監視することが可能となる。

この閃光に関する報告は、今のところ、George Varrosさんの公表した1件だけだ。観測史上初の月食中の月面衝突閃光と言い切れるかどうかは微妙で、他の地点での同時観測がないため、ノイズあるいは他の現象をとらえた可能性も否定しきれない。月面衝突閃光と見間違う可能性の高いものには、電気的ノイズ、CCDに当たった宇宙線の影響、人工衛星のフラッシュ等がある。月面衝突閃光を研究している電気通信大学の柳澤正久教授は、像が閃光現象というよりもノイズのように見えることや、1フレーム目よりも2フレーム目のほうが明るい(通常は逆)といった気になる点があり、月面衝突閃光かどうか現時点では何とも言えないとコメントしている。月面での現象であることをはっきりさせるためには、複数地点で同時に現象を捉えている必要がある。

ちなみに日本ではこのとき、月は地平線よりも下にあり、この月食を見ることはできない条件だった。

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