火星の氷河期は地球より複雑

【2007年9月21日 University of Hawaii

火星にも地球同様、氷河期があったらしい。しかし、氷河期が終わった現在でも、氷は予想以上に広い範囲で残っている。最新の研究によれば、地球にはない火星の自転の「ふらつき」が気候変動を劇的にしているようだ。このことは2008年に火星の北極に着陸するNASAの火星探査機「フェニックス」で検証できるかもしれない。


予想される火星地下における氷の分布

火星の緯度に応じた、予想される地下における氷の分布。クリックで拡大(提供:UH IfA, Norbert Schörghofer/図中の文字はアストロアーツニュース編集部訳)

過去数百万年における火星地下の氷の移り変わり

過去数百万年における火星地下の氷の移り変わり。地軸の変動に伴い火星では乾いた気候と湿った気候が繰り返す。クリックで拡大(提供:UH IfA, Norbert Schörghofer/図中の文字はアストロアーツニュース編集部訳)

地球における氷河期の存在が判明したのは19世紀ごろだが、この数年における探査機の活躍で、火星にも氷河期があるとわかってきた。しかし、火星では北極や南極からだいぶ離れたところにも氷が残っていて、地球からの類推では説明できなかった。ハワイ大学の天文学者Norbert Schörghofer氏は、火星の氷河期について新たな仮説を提唱した。鍵を握るのは、自転の「ふらつき」である。

地球の自転軸は、地球の公転面に対して23度ほど傾いている。一方、火星の自転軸の傾きは25度。両惑星の類似点として引き合いに出されることがある数値だが、これは現在偶然一致しているにすぎない。地球では月が回転を安定させる役割を果たし、自転軸はコマのように首振り運動はしても、傾きの角度は変わらない。しかし、大きな衛星を持たない火星の場合は最大で10度も変化するのだ。

前回火星で大規模な氷河期が発生したのは、300〜500万年前のこととされている。このときは広い範囲で雪が降り、氷の層が両極を中心に大きく広がった。その後、氷の大部分は蒸発してしまい、前線は後退していく。

さて、火星の自転軸が大きく傾くと気温が変化し、湿度が高くなる。これによって、氷河期のように雪が降るまでには至らないが、大気中の水分が土壌のすき間に入り込んで凍りつく。こうして出来た「凍土層」が氷河期時代の氷の層に重なり、自転軸が変化しなかった場合に比べ、緯度が低いところでも氷が残ることになるのだ。

ところで、先月打ち上げられたばかりの火星探査機「フェニックス」は、2008年5月に氷河期時代の氷が残る限界付近に着陸する予定だ。フェニックスは長い腕で地面を掘ることができる。Schörghofer氏は、土砂の下から凍土層と氷の層が両方見つかることを期待している。

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