「あかり」、遠赤外線で無数の遠方銀河を検出

【2007年9月15日 宇宙科学研究本部 トピックス

JAXAの赤外線天文衛星「あかり」(ASTRO-F)が、遠赤外線で過去最大規模の観測を行い、宇宙の果てにある銀河を多数とらえることに成功した。広大な領域をこれまでにない精度で描き出した観測結果は、銀河の進化モデルを考えるうえでひじょうに重要なものとなった。


あかりがとらえたおよそ10平方度の領域に散らばる多数の銀河(白い点)

あかりが90マイクロメートルの波長帯でとらえたおよそ10平方度の領域。多数の銀河(白い点)が散らばっている。クリックで拡大(提供:JAXA)

「ロックマンホール」で見つかった銀河の明るさの分布

「ロックマンホール」で見つかった銀河の明るさの分布(横軸は銀河の個数、縦軸は明るさ)。クリックで拡大(提供:JAXA)

「あかり」は、より遠方の銀河をとらえるために、遠赤外線による過去最大規模の観測を行った。観測に選ばれたのは、われわれの天の川銀河内の星間ガスがもっとも少ない領域。ここは天の川銀河の外をのぞき見ることができる、いわば観測のための「窓」だ。

1枚目の画像は、「あかり」が波長90マイクロメートルの赤外線でとらえた窓の1つだ。合計200回の観測により、約10平方度という広大な領域がこれまでにない精度で描きだされている。

画像には、さまざまな明るさで銀河が写っている。この波長帯で、これだけ数多くの暗い銀河がとらえられたのは、初めてのことだ。

また、「あかり」は、波長90マイクロメートルで「ロックマンホール」と呼ばれる別の「窓」から銀河を検出した。そして、JAXAの研究者らは、その銀河を何段階かの明るさに分け、数を数えた。2枚目の図は、その個数を表している。

破線は、昔と今とで銀河の明るさや個数に変化がない場合に予想される銀河の個数だ。比較すると、「あかり」の観測結果では、暗い銀河の方が多くなっている。つまり、昔の方がより多くの星の生成が起きていたことを示している。

一方、一点鎖線は過去に激しい星の生成があったするモデルから予想される銀河の個数だ。過去の激しい星の生成は、NASAの赤外線天文衛星スピッツァーの観測結果とも一致している。しかし、「あかり」が検出した銀河の数は、モデルの予測値より少なかった。

これら「あかり」の観測結果は、銀河の進化モデルを考えるうえでの重要な情報となったと言えそうだ。

さらに「あかり」は、銀河が写っていないところからも、ぼんやりとした赤外線が届いているようすを明らかにした。この中には赤外線宇宙背景放射と呼ばれる、宇宙の始まりに近い時代の光が含まれている。この赤外線宇宙背景放射の明るさのむらや波長ごとの強度を詳しく調べることで、銀河の起源や宇宙の構造にせまることができると期待されている。