「クイーン」のブライアン・メイ氏が天体物理学の博士号取得へ

【2007年7月31日 IAC Press Release

英国のロックバンド「クイーン」のギタリストで作詞作曲家のブライアン・メイ氏(60歳)が、天体物理学の博士号を取得しようとしていることが明らかにされた。「ウィー・ウィル・ロック・ユー(We Will Rock You)」などの名曲を世に出したメイ氏は、8月に博士論文「黄道塵(こうどうじん)の中の視線速度(Radial Velocities in the Zodiacal Dust Cloud)」を発表する。


1971年、24歳のブライアン・メイ氏はロンドンのインペリアルカレッジで天体物理学の博士号取得を目指していた。彼は惑星間物質の研究で2本の論文に名を連ねていて、1つは科学雑誌「Nature」に掲載されている。しかし、ギタリストとしてクイーンの立ち上げに加わり、アルバムが大ヒットしたことで、天文学から離れることとなってしまった。それでも、メイ氏の天文学への興味が失われることはなかった。

メイ氏は昨年9月から、約36年ぶりに博士論文に打ち込んでいた。自身のウェブサイトbrianmay.comに掲載されたところによれば、BBCテレビの電話インタビューにメイ氏は「名誉学位ではなく、かつて目指していた本物の学位が欲しかったんです。ほかのものすべてを投げ打って、本当に集中しなければなりませんでしたが、そこから生まれる喜びもありました」と話している。

メイ氏は、スペイン領カナリー諸島のラ・パルマにあるカナリア天文物理研究所で論文「黄道塵(こうどうじん)の中の視線速度(Radial Velocities in the Zodiacal Dust Cloud)」に取り組んでいた。黄道塵は太陽系の黄道面に分布する、彗星や小惑星を起源とする微粒子であり、太陽光を散乱したときの輝きは空が暗ければ地上からも観測できる。

さらに、7月23日と24日にはラ・パルマ天文台の口径3.6メートル光学望遠鏡で黄道塵のスペクトルを観測した。8月23日にはインペリアルカレッジで論文を発表し、審査を経て博士号を授与される見込みだ。

観測に協力したカナリア天文物理研究所のGarik Israelian教授は、「彼が36年前に博士号を取得していたら、科学の分野でもきっと輝かしい成功をおさめていたことでしょう。でも、クイーンのファンとしては、科学の分野からしばらく離れてくれてよかったといえますね」と話している。

なお、メイ氏はこれまでもさまざまな形で天文普及に携わってきた。英国の著名な天文解説者パトリック・ムーア氏らとの共著「BANG! 宇宙の起源と進化の不思議」は、邦訳が7月に発売されている。また、現在は天文のための曲づくりにも着手しているとのこと。その曲は、ラ・パルマ天文台で建設中の「カナリー巨大望遠鏡(GTC)」の落成式でお披露目される予定だ。

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