人類は再び月へ、そしてその先の火星に向けて動き出す

【2005年10月14日 NASA FEATURE

2010年代の終わりには、NASAは、再び有人月探査に乗り出す計画だ。探査機の形といい、一見かつてのアポロ計画を思わせるが、今度の計画は月がゴールではない。その先の、火星探査を見越した技術の数々が使われるのだ。

(月の周回軌道上の新型探査機の想像図) (月面に降り立つ宇宙飛行士と着陸機の想像図)

(上)月の周回軌道上の新型探査機の想像図。(下)月面に降り立つ宇宙飛行士と着陸機の想像図。(提供:Artist's concept by John Frassanito and Associates)ともにクリックで拡大

有人月探査計画の第二期は、新しい宇宙船の建設とともにまもなく始まろうとしている。探査機やロケットは、アポロとスペースシャトルで培われた技術を元に、さらに工夫されたものになるようだ。月着陸船と帰還船はアポロ計画のものと似た形だが、大きさは3倍で、4人の飛行士が乗り込めるようになっている。太陽光発電システムが搭載されるほか、エンジンには液体メタンが燃料として使われる。将来、火星の大気に含まれるメタンを資源として利用することを想定しているのだ。また、探査機は、断熱シールドを交換するという簡単な修復が施されれば、10回まで再利用が可能になるという。

技術の進歩や過去の教訓から、計画では利便性が追求されるとともに安全性も重視されている。たとえば、月着陸船が月面に降り立っている間、月周回船(司令船)は無人でも自動的にコントロールされるようになっている(アポロ計画当時は一人が残らねばならなかった)。また、地球から離陸するときは、人を乗せた宇宙船はロケットの一番上にあるので、落下物による事故の危険は少なく、さらに万一に備え脱出カプセルも用意されている。

アポロ計画の着陸地点は、月の赤道付近に限られていたが、新しい着陸船は、充分な推進燃料を搭載できるため、月の表面のどこにでも着陸が可能となる。NASAの専門家は、月面基地の建設候補地を月の南極で探している。水素を取り出すことのできる、水の氷が大量に存在していると考えられる上、エネルギー源としての太陽光が豊富に届くからだ。

最初のうちは7日間程度の滞在だが、一年に最低2〜6回のペースで探査船を送り、月面基地を建設して最大6ヶ月の月面滞在を可能にするとのことだ。クルーは、月についてさらなる調査を行うが、地球の外で長い時間生活することは、次なる目的に向けての貴重な経験となるだろう。そう、地球から三日間でいける月での活動はまだ小さな一歩なのだ、有人火星探査という、人類にとっての次なる偉大な一歩に比べれば……。


: 月は、地球ただ一つの衛星で、地球以外に人類が降り立ったのも月だけです。唯一有人探査を行ったアポロ計画では、多くの岩石が持ち帰られるなど、月の謎の解明に大きく寄与するとともに、人類の夢「月旅行」を実現しました。月の表面はクレーターに覆われ、大気や流れる水はありません。太陽光を浴びる赤道直下は約摂氏110度、夜の部分はマイナス摂氏150度を下回ります。(「太陽系ビジュアルブック」より一部抜粋)

「新たな宇宙活動の拠点を築く」: 重力が地球の6分の1という月の環境は、惑星探査ロケットの打ち上げにも適している。アルミニウムやチタンなど豊富な有用資源の掘削、大気のゆらぎから解放された天文観測……。月面基地はさまざまな可能性を持つ。しかし月面に基地を建設するには、まず月を知らなければならない。日本では「LUNAR-A」と「SELENE」が進行中だ。中国も周回、着陸、サンプルリターンの3段階からなる「嫦娥計画」を発表。インドは周回探査機「チャンドラヤーン」の打ち上げを計画している。月面基地の実現に向け、準備は着々と進んでいるのだ。(「宇宙年鑑2005」《宇宙開発・科学探査の最新情報、成果、将来計画を網羅》より抜粋)