野辺山の電波望遠鏡、巨大ガンマ線フレアに伴う「火の玉」を検出

【2005年5月11日 国立天文台 アストロ・トピックス(100)

国立天文台、東工大、上海天文台などからなる研究グループが、軟γ(ガンマ)線リピーターという天体の大爆発によって生まれた火の玉(エネルギーのかたまりとなっているプラズマ)の電波画像を撮影することに成功しました。

2004年12月28日に、観測史上最大強度の宇宙ガンマ線が地球に飛来し、日本の磁気圏観測衛星ジオテイルをはじめ、多数の観測衛星や惑星探査機によって検出されました。

国立天文台野辺山宇宙電波観測所ではカリフォルニア工科大学などのグループと協力しガンマ線源の方向を野辺山ミリ波干渉計を用いて観測しました。その結果、爆発の一週間後の2005年1月4日に得られた画像に、ガンマ線の源と同じ場所に明るい電波源が発生しているのをとらえました。この電波は、強烈なガンマ線とともに放出された巨大なエネルギーを含む火の玉(プラズマ)からのシンクロトロン放射と考えられます。他の望遠鏡による観測から、この電波源は光速の約4分の1の速度で膨脹しながら暗くなっていったことがわかりました。9日後の2005年1月13日に野辺山ミリ波干渉計で再び観測したところ、すでに検出限界よりも暗くなっていました。これは、「火の玉」が電波の放射と膨脹によってエネルギーを失ったためと考えられます。

このガンマ線の発生源は、SGR 1806-20と呼ばれる天体で、その正体は、普通の中性子星の数百倍にあたる1000兆ガウスもの磁場をもつ超強磁場中性子星(マグネター)であると考えられています。通常は断続的に短時間の小さな軟ガンマ線放射(バースト)を不規則に繰り返し放射することから、「軟ガンマ線リピーター(SGR)」として知られていました。今回の大爆発では、強い磁場として蓄えられていた膨大なエネルギー(太陽の放射エネルギーの25万年分に相当)がわずか0.2秒の間に放出されたものと推定されてます。

軟ガンマ線リピーターは天の川銀河の中に3個、大マゼラン雲中に1個の合計4個が知られています。そのうちの2個が1979年および1998年にそれぞれ巨大フレアを起こしていますが、今回のものは、前回の100倍以上の強さでした。その意味で、数十年に一回観測されるような、珍しい現象だったわけです。

米国にある電波望遠鏡VLAを用いた観測からは、この天体の距離が約3万光年であることが、新たにわかりました。この距離の測定によって、ガンマ線強度や爆発エネルギーの正しい推定ができるようになりました。また、野辺山とVLAに加えて、インド、スペイン、オーストラリアの電波望遠鏡を加えた結果から、周波数が高い電波ほど速く減衰していたことがわかりました。このことは、膨脹速度が光速の4分の1から次第に減速していったことを反映していると考えられます。

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