スピッツァー宇宙赤外線望遠鏡、暗黒物質を赤外線で捉える

【2004年6月15日 Spitzer Press Release

われわれの銀河で起きているマイクロレンズ効果についてスピッツァー宇宙赤外線望遠鏡が観測を行った結果、レンズ源となっている天体が低質量の星であることが明らかになった。従来は暗黒物質と考えられていたもののうち、少なくとも一部はこういった低温低質量の星であることを示唆しているのかもしれない。

銀河系内に見られる17の重力マイクロレンズ効果については、もともとは1992年から大マゼラン雲にある1200万個もの星を観測して発見されたものである。この17のマイクロレンズ効果のうち、ハッブル宇宙望遠鏡で唯一捉えることのできるMACHO-LMC-5(MACHO: Massive Compact Halo Objects、銀河のハローに存在するコンパクトな質量天体)をスピッツァー宇宙赤外線望遠鏡が観測したところ、MACHO-LMC-5にレンズ効果を及ぼしている天体がわれわれから1500光年離れた低質量の星であることがわかったのだ。同チームは、同様の効果が起きている天体4つについてはすでにデータの収集を終えており、さらに9つについての研究、分析も進められることになっている。

今回の発見のように、マイクロレンズ効果のうちいくつかは近くに存在する低温の天体によるものかもしれない。もしそうだとすれば、そのレンズ源天体の検出にスピッツァー赤外線望遠鏡が大活躍することが大いに期待される。観測とデータの分析が進めば、多くの重力レンズの特色が決定され、われわれの銀河系に存在する暗黒物質のうち低質量天体の割合がどのくらいなのかということも解明されていくだろう。