すばる望遠鏡、惑星形成領域に結晶化ケイ酸塩鉱物を発見

【2003年10月3日 すばるトピックス

すばる望遠鏡に取り付けた中間赤外線観測装置COMICSの観測により、若い星の周囲に広がる原始惑星系円盤内に結晶質のケイ酸塩鉱物が検出された。太陽系内の彗星に含まれる結晶質のケイ酸塩の起源や、惑星形成のプロセスを解明する手がかりになると期待されている。

(Hen3-600Aの画像)

COMICSが波長8.8μmで撮影したHen3-600A。右の小さな点は伴星(提供:国立天文台、すばる望遠鏡)

ケイ酸塩の鉱物が検出されたのは、ケンタウルス座のHen3-600Aという星で、太陽から約160光年離れたところに位置している。この星は、Tタウリ型と呼ばれる分類に属する、年齢が500万〜1000万年という若い星で、星の周りには惑星系の元になる原始惑星系円盤が広がっている。

これまでの観測では、星や惑星の原材料となる星間物質や惑星形成が進んでいる若い星の周りの原始惑星系円盤では、ケイ酸塩は非結晶質の状態で存在しているとされてきた。一方、太陽系の原材料物質を保存していると考えられている彗星からは、結晶質のケイ酸塩が発見されている。このことから、彗星や惑星の形成過程でケイ酸塩が非結晶質から結晶質へと進化したと考えられてきた。その後、太陽よりもかなり重い若い星の周囲からは結晶質のケイ酸塩が発見されたが、太陽程度の質量の星や若いTタウリ型星では見つかっていなかったのである。すばる望遠鏡と冷却中間赤外線分光撮像装置COMICSの組み合わせにより、今回初めてTタウリ型星の周囲から結晶質のケイ酸塩が検出されたのだ。

今回の観測により、太陽程度の質量を持つ若い星でもケイ酸塩の結晶化が起きていることが明らかになった。また、ケイ酸塩の結晶化には600度もの温度が必要なため、原始惑星系円盤内でそのような加熱プロセスが起こっていることも示唆された。今後、原始惑星系円盤内でケイ酸塩が空間的にどのように分布しているかを調べることで、結晶化のプロセスにさらに迫ることができるということである。

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