VLT、爆発直後のIa型超新星の形状を観測

【2003年8月12日 ESO Press Release

ESO(ヨーロッパ南天天文台)のVLT(The Very Large Telescope)による超新星の観測から、Ia型に分類される超新星の爆発直後の形状が求められた。この観測で、爆発直後は非対称な形をしていることが初めてわかった。

(超新星SN2001el出現前後の画像)

超新星SN2001elが出現した銀河NGC1448。左が出現前、右が出現後もっとも明るいころ(提供:STScI / ESO

観測されたのは、2001年9月に発見された超新星SN2001elで、6000万光年離れた銀河NGC1448で爆発したものである。偏光測定(polarimetry)という手法により、超新星からやってくる光がほんの1%ほど偏光していることが観測されたのだが、この偏光は、超新星爆発が球対称ではないことを示している。

Ia型超新星は、太陽の数倍程度の質量を持つ星が燃え尽きてできた白色矮星が爆発する現象で、極大時にはその爆発が起こった銀河全体の明るさに匹敵するほど明るく輝く。また、Ia型超新星の本来の極大光度やその後の光度変化はどれも同じだと考えられており、理論的に計算された極大光度と観測された見かけの極大光度とを比較することによって、超新星までの距離(すなわち銀河までの距離)が求めるられるのである。

ところが、今回の観測結果によれば、Ia型超新星は爆発直後から明るさが極大になるころまでは球対称ではなく非対称な形をしているということがわかったのだ。つまり、観測する見かけの方向によっては、本来とは異なる明るさで見えてしまうということになる。明るさが正しく得られなければ距離の推定も間違ってしまうので、天文学にとっては大問題だ。

幸いなことに、極大から数週間ほど経過すれば球対称な形になることもわかった。つまり、正しい距離の推定のためには、極大からしばらく経ってからの明るさを用いるべきだということになる。

Ia型超新星による距離の測定は天文学でよく用いられてきた方法だが、今後はより注意深く適用する必要がありそうだ。また、どのようなメカニズムによって非対称的な爆発が起こるのか、3次元モデル計算などを行ってさらに理論を確立していかなければならないだろう。