ガンマ線バーストはやはり大質量星の重力崩壊に伴う現象のようだ

【2003年3月27日 Chandra Photo Album

ガンマ線バーストの残光をX線で観測することにより、ガンマ線バーストが大質量星の重力崩壊に伴って起こる現象であるという説がさらに有力になった。

(ガンマ線バーストのイラストとX線スペクトルの図)

ガンマ線バーストを模式的に示したイラスト。右下は得られたX線スペクトル(提供:イラスト:CXC/M.Weiss、スペクトル:NASA/CXC/N.Butler et al.)

宇宙のはるか遠方で起こるガンマ線バーストはひじょうに高いエネルギーを放射する現象だが、その起源についてはまだはっきりとしたことはわかっていない。現在のところもっとも有力視されている説は、大質量の恒星が重力崩壊を起こしてブラックホールが生まれるときに高エネルギーのジェットが発生し、そのジェットによって作られる衝撃波がガンマ線バーストであるというものだ。また、超新星の周りに広がるシェル(球殻状の構造)とジェットが相互作用し、可視光やX線で観測される残光が発生すると考えられている。

NASAのX線観測衛星チャンドラは、昨年8月13日に発生したガンマ線バーストGRB020813の残光をのべ21時間にわたって観測した。その結果、ケイ素や硫黄イオンに特徴的な線がX線スペクトル中にはっきりと見られたのである。これらのイオンは超新星爆発によって放出される典型的な元素なので、ガンマ線バーストと超新星爆発との関連を強く示唆していると言えるだろう。

スペクトルの解析からは、イオンが光速の10%の速さでガンマ線バーストから遠ざかっていることやガンマ線バーストが細く絞られたビーム状になっている可能性が高いこと、超新星爆発からガンマ線バーストまでおよそ60日ほどの間が空くことなどもわかった。

ガンマ線バーストの正体が、これまで有力視されてきた超新星爆発に関連した現象であるという強い証拠が得られた一方で、爆発からガンマ線バーストまで60日も間が空くという新たな謎も生まれた。ガンマ線バーストにはまだまだ謎が多く残されているようである。