銀河系中心にある超巨大ブラックホールのX線強度の変動が観測された

【2003年1月20日 Chandra Photo Album

NASAのX線観測衛星チャンドラによる銀河系中心の長時間にわたる観測から、銀河系中心の超巨大ブラックホールから放射されるX線の強度が変動しているようすが明らかになった。

(銀河中心のX線画像)

X線で観測した銀河中心。赤は低エネルギーに、青は高エネルギーに対応。図の右上と左下方向にガスの広がりが赤く見えている(提供:NASA / CXC / MIT / F.K.Baganoff et al.)

今回発表された結果は、太陽系から2万6000光年離れた銀河系中心にある太陽の300万倍もの質量を持つ超巨大ブラックホールSgr A*(いて座A*)を1999年9月から2002年6月まで11回、計164時間も観測して得られたもので、今までの観測の中でもっとも長時間にわたるものだ。観測結果によると、そこから放射されているX線の強度が何度も変動していることがわかった。

X線の強度が変動する原因はまだわかっていないが、短い期間の間に何度も変動していることから、この原因となる現象は「事象の地平線」と呼ばれるブラックホールのすぐ近くで起こっているらしいと思われる。また、変動の幅がそれほど大きくないことから、ブラックホールの近くには燃料となるガスが乏しいと考えられている。

燃料となるべきガスはどこにいってしまったのだろう?さらに大きなスケールで銀河系中心を観測してみると、2000万度のガスが中心の両側に数光年にわたって広がっている。これは、過去1万年ほどの間に何度か銀河中心が激しい爆発を起こして中心近くから吹き飛ばされたものだろうと考えられている。つまり、銀河系中心のブラックホールは、長い期間の間には何度か大爆発を起こしており、その一方では数日という単位で小規模の変動もしているということだ。

さらに観測や解析を進めることで、銀河中心の超巨大ブラックホールがどのように形成されたのか、ブラックホールとその周りの環境の間でどのような相互作用が起こっているのか、といったことが明らかにされると期待されている。他の多くの銀河の中心にも同様の超巨大ブラックホールがあると考えられており、その起源や進化のようすの研究にも手がかりを与えてくれるだろう。