国内初、惑星の衛星による恒星食の観測に成功

【2002年12月18日 せんだい宇宙館

16日早朝、土星の第3衛星テチスによる9等星の恒星の食が東日本で見られ、7名の方が観測に成功した。惑星の衛星による恒星食が観測されることは世界的にも極めてまれで、国内では史上初ということだ。

食現象は、2002年12月16日の3時57分(日本時間)ころに起こった。かくされたのはTYC1310-02435-1という9等星の恒星である。この予報は、現象の直前にIOTAより発表され、国内では掩蔽観測者のネットワークJOINで公開された。観測に成功された方々は以下のとおり(敬称略)。

氏名観測地観測方法観測結果
柏倉 満山形県大江町 VTR03h56m54.71sより 0.06secかけて減光
03h57m34.79sより 0.06secかけて復光
浜野和天文台福島県郡山市 VTR03h56m52s 減光/03h57m31s 復光
八重座 明茨城県日立市 眼視03h56m51.8s 減光/03h57m28.1s 復光
高島英雄千葉県柏市 VTR03h56m50.65s 減光/03h57m23.61s 復光
橋本秋恵埼玉県秩父市 眼視減光時刻は雲のため不明
03h57m27.79s に復光
北崎勝彦東京都武蔵野市 VTR03h56m51.59sより 0.03secかけて減光
03h57m24.63s 復光
片山栄作東京都三鷹市 VTR03h56m52s 減光/03h57m25s 復光

この掩蔽帯の延長はヨーロッパに達していたが、天候が不良だったようで現在までに食の観測の成功は2件のみ報告されているということだ。なお、国内の報告にもとづいた整約の結果はせんだい宇宙館のホームページ上で速報している。

テチスの実直径は1060kmとされているが、それによくフィットする円弧が得られた。この結果から、テチスの影は東日本を中心に通過したものと思われる。今後、ヨーロッパの観測も追加して更に改良される予定だ。

観測されたデータの詳細は、IOTA、国立天文台、海上保安庁海洋情報部、東亜天文学会他、広く公開され星食の研究に役立てられる。せんだい宇宙館では「星食観測は多くの観測者により成立するものですので、この種の現象を通じて、天文仲間のフレンドシップの広がることを期待しております。」とコメントしており、一人でも多くの方が食の観測をされることを願っている。

なお、来年2003年の11月25日には土星本体が8.3等の恒星をかくす現象が起こる。

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