小惑星によるポルックスの星食(続々報)
【2002年3月28日 国立天文台・天文ニュース(538)】
天文ニュース(504)でお知らせしました小惑星(55)パンドラによるポルックスの星食は、10日後に迫りました。これは、4月7日の夕刻、日没後30分余りの薄明の中で、18時41分から42分の間(日本時)に、1.2等の明るさのポルックスが、最大で4.8秒間突然消失したように見える現象です。見かけ上はたったそれだけのことですが、一等星が小惑星に隠されるというのは、稀にしか起こらないほんとうに珍しい現象で、関係者の間では大きな関心が寄せられています。ここで、現在のもっとも新しい情報をお知らせします。
最大の問題はこの星食の起こる場所です。天文ニュース(504)でお知らせしたよりもまた少し北にずれました。中心線は、大体のところ北海道西岸の浜益村浜益と太平洋岸の豊頃町湧洞沼を結ぶ直線で、その両側約35キロメートルの、全部で約70キロメートル幅の地帯がこの星食を見られる地域になります。ここには、美唄市、滝川市、帯広市などが含まれます。前回範囲に含まれるとお伝えした札幌市は、残念ながらやや南側に外れました。また、旭川市は北側に外れています。しかし、この予報位置は絶対確実なものではなく、数10キロメートル程度南北にずれる可能性もあります。いまの情報では多少予想範囲から外れた場所であっても、注意が必要です。
ポルックスの星食が起こる範囲のうち、中央のおよそ52キロメートル幅がポルックスの皆既食帯で、その両側のそれぞれ17キロメートル幅が部分食帯になります。部分食帯では、ポルックスが完全に消えるのではなく、明るさが暗くなるだけと思われます。
天文学的に価値のある観測をするには、経緯度のはっきりわかった地点で、食の起こった正確な時刻を求める必要があります。観測法の詳細については、下記のURLをご覧になってください。いずれにしても短時間の現象で、そのときを逃せばチャンスは二度とありません。当日の天気がよく、価値の高い観測データが得られることを期待しましょう。