X 線で見た金星の姿

【2001年12月6日 Marshall Space Flight Center News Release

NASA の X 線衛星チャンドラを使って撮影された金星の写真が公開された。金星を X 線で観測したのはこれが初めてのことで、金星の大気の研究に新しい情報をもたらしてくれるものと期待されている。

(X 線で見た金星の写真)

チャンドラが撮影した X 線で見た金星の写真(写真提供:NASA)

X 線で見た金星は可視光で見たものと似ているが、重大な違いもいくつかある。可視光では、金星と地球、太陽の位置関係から三日月と半月の間くらいの形に見え、真ん中のほうが明るい。一方 X 線ではやや半月よりに見え、縁のほうが明るく輝いている。

この違いは、可視光と X 線とで輝く過程が異なっていることによる。可視光の場合は太陽からの光を反射して光っているのだが、X 線の場合は蛍光現象で光っているのだ。太陽の X 線が金星の大気に入ってくると、大気中にある原子の内側のほうにある電子をたたき出し、その原子をよりエネルギーの高い状態へと励起する。その励起された原子はすぐにエネルギーの低い状態に戻るが、その時に蛍光 X 線を放射するのである。

金星の場合、蛍光 X 線のほとんどは地表 120km から 140km の間にある酸素原子や炭素原子からやって来る。一方、可視光は高度 50km から 70km の雲に反射されたものである。結果的に、金星の光り輝く(可視光の)半球は X 線で明るく光る層に囲まれているように見えることになる。

今回のチャンドラによる金星の観測は技術的な偉業でもあった。地球から見た金星は太陽から 48° 以上の角度遠ざかることはない。この近さのために、他の X 線天文衛星では、観測のためのガイド星を追跡して金星の方向を見続けるということができなかったのである。

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