太陽黒点はなぜ長期間存続できるのか?
その安定性の謎を SOHO が解明

【2001年11月14日 ESA Feature of the Week(11 月 6 日)】

太陽の黒点の周りのガスの流れのようすが ESA(ヨーロッパ宇宙機関)と NASA の衛星 SOHO(太陽観測天文台)の観測によって明らかになった。黒点に関する謎を解く手がかりになりそうだ。

MDI によって明らかになった、黒点の下のガスの流れ(画像提供:NASA / ESA)

今回わかったのは、黒点とは渦の一種で、そこでは太陽の表面近くの高温ガスが集まって時速 4000km 以上で内部に沈んでいっているということ。黒点の内部には強い磁場があって内部からのエネルギーの上昇を押さえつけており、そのために黒点は温度が周りより低く暗く見えるのだということはずっと以前から知られていた。しかし、黒点の起源とその安定性の問題は、長い間太陽物理学における謎であった。

SOHO が明らかした黒点の周囲の収束するガスの流れは、なぜ磁場が集中するのか、そして黒点はどうやって数日から数週間にわたって存在し続けるのか、という謎を説明してくれそうである。プロジェクトに携わっている ESA の Bernhard Fleck は「SOHO のおかげでこの謎を解明し始めることができそうだ。これは喜ばしいことだね」とコメントしている。

今回の結果は、アメリカの研究チームが SOHO に搭載された MDI(The Michelson Doppler Imager)という装置を使って調べたもの。この装置は、太陽内部の音波の速度を測定しどのように跳ね返るかを調べることによって内部の様子をマッピングする。医療で用いられる超音波測定と同じ原理の技術で「日震学」として知られている。

ガスの流れが渦になっているために黒点が長期間存続できるのは次のように説明できる。黒点の磁場による冷却は下向きの流れを引き起こし、下方に沈んで消えていったガスは新しく黒点へ流れ込んでくるガスと入れ替わる。新たに流れ込んできたガスは新しい磁場も一緒にもたらすので、黒点の強い磁場が拡散してしまうのを妨げる。磁場が残っているので冷却と下方流は持続するというわけだ。

なお、大阪府の河村俊一さんから黒点群の写真を送っていただいたので紹介しよう。

(太陽の写真)

11 月 9 日の大黒点群。クリックでモノクロ高画質写真

タイトル:大黒点群
撮影日時:2001 年 11 月 09 日 10:36:57
撮影者:河村俊一 撮影地:大阪府狭山市
撮影機材:ペンタックス製 7.5cm EDHF 屈折 + XL28mm + ニコン COOLPIX995、露出オート(/1445 秒)、ズームは望遠側(24.1mm F9.9)、ND400 + ND8 + ND4 フィルター、電動追尾。ステライメージ 3 を使用。シーイング 4/5; 透明度2/5。

●撮影者コメント: 今月初め、太陽面東南縁に現れた、ぱらぱらした感じの黒点群は、その後見事に成長して、大黒点群になった。肉眼黒点かどうかはまだ分からないが、サイズだけは今年 3 月出現した巨大黒点群に迫るものがある。当地、今月上旬は雲の多い日が続いており、この写真もねばって雲間から写した。いつもよりフィルター(ND2)が一枚少ない。

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