[VLT] 太陽以外の恒星のコロナを検出成功

【2001年8月6日 ESO Press Release 17/01 (2001.08.01)

Jurgen Schmitt氏 (ドイツ、ハンブルク大学天文台) の研究チームが、ヨーロッパ南天天文台 (ESO) の8.2メートル望遠鏡「VLT」を用いた分光観測により、太陽系から近い恒星のコロナを検出することに成功した。太陽以外の恒星のコロナはこれまでも宇宙空間のX線観測衛星により観測されてきたが、地上の可視光望遠鏡による検出成功はこれがはじめて。

コロナとは、恒星を取り巻く超高温ガスの層で、いわば恒星の大気である。その温度は100万度以上に達する。超高温のためX線域では明るく輝いており、X線観測衛星を用いれば比較的容易に観測できる。しかし可視光域においては恒星本体の輝きに比べてはるかに淡く、恒星本体の輝きにすっかり埋もれてしまうため、観測は困難となる。

私たちの太陽の場合、月が太陽面を完全に隠してしまう皆既日食の際には淡く広がるその姿を肉眼でも見ることできる。また、高地や宇宙空間など大気による散乱を受けにくい場所でコロナグラフと呼ばれる特殊な観測装置――太陽面を覆い隠す遮光板を持つ――を用いても観測が可能だ。

しかし、太陽以外の恒星の場合は、視直径があまりにも小さいため、現在のコロナグラフでは恒星面のみをうまく遮光することができず、コロナまですっかり隠してしまう。したがって、恒星面から放射されるまばゆい輝きの中に潜む淡いコロナの輝線を、なんとか直接検出する以外に方法が無い。しかしこれは、高精度の分光観測が可能な大型望遠鏡をもってしても困難である。

そこで研究チームは、赤色矮星を観測対象とすることを考えた。赤色矮星は太陽の半分以下の質量の小型恒星で、可視光域では太陽の1000分の1程度の光しか放たない。しかし、X線域では太陽と同等、ときには以上の輝きを放っていることがわかっており、太陽と同等のコロナを持つと推測される。

研究チームはこのアイデアのもとに、太陽系から約8光年の距離にある赤色矮星「しし座CN」をVLTを用いて高精度分光観測し、そして慎重な分析の結果、コロナに含まれる12価鉄イオン (Fe XIII) の輝線を検出することに成功した。