[HST] 近傍銀河の紫外線観測から遠方銀河の本来の姿を探る

【2001年1月24日 STScI-PRC01-04 (2001.01.09)

遠方の銀河には、とても奇妙な形状をしたものが多いことが知られる。それらは、私たちの銀河系の近傍に見られる渦巻き銀河や楕円銀河とは全く異なる外観をしている。しかし、それは本来の姿なのだろうか?

宇宙が膨張しているため、遠方銀河が放つ光の波長は大きく引き伸ばされる (赤方偏移)。距離にもよるが、特に遠方の場合、地球から見たとき、遠方銀河が可視光として放っていた光は赤外線として観測され、紫外線として放っていた光は可視光として観測される。したがって、可視光でとらえられた遠方銀河は、遠方銀河が紫外線として放っている放射をとらえたものなのである。紫外線は、銀河の中の星生成領域などの若い星が集まった領域で強く放たれ、古い星の集まる領域では弱いため、可視光で見たときと紫外線で見たときとでは、銀河の姿が大きく異なったとしても不思議ではない。

そこで天文学者たちは、37の近傍銀河を紫外線と可視光で撮影し、見え方の違いを調べることにした。次の3枚の紫外線画像はその一部で、NASAのハッブル宇宙望遠鏡 (HST) の広視野/惑星カメラ-2により撮像されたものである。

星生成渦巻き銀河 NGC3310

星生成渦巻き銀河 NGC3310

「おおぐま座」の方向およそ4600万光年の距離にあるNGC3310銀河は、活発な星生成活動を行なっている渦巻き銀河だ。多くの銀河では若い星と古い星とでは分布が異なるが、この銀河の場合、若い星も古い星もほぼ均等に混ざり合っているため、紫外線で見ても可視光で見るごく普通の渦巻き銀河とそう変わらない。2000年9月12日〜13日の撮像。

矮小渦巻き銀河 ESO0418-008

矮小渦巻き銀河ESO0418-008

南天の「ろ座」の方向およそ5600万光年の距離にあるESO0418-008銀河は、小さく若い渦巻き銀河である。この銀河では、古い星は中心に集中し、若い星は腕の部分の星生成領域に集中している――このような分布は、多くの渦巻き銀河において典型的なものだ――。結果として、紫外線で見るとこのような異様な姿に見える。初期宇宙にはこの銀河のような小さな渦巻き銀河が多く存在し、それらが衝突・融合を繰り返して私たちの銀河系のような典型的な銀河が形成されたと考えられている。この画像が示唆することは、多くの遠方銀河は、本来はそれほど異様な姿をしているわけではないのかもしれないということである。2000年10月10日の撮像。

衝突銀河 UGC06471 と UGC06472

衝突銀河 UGC06471 と UGC06472

この画像は、UGC06471とUGC06472という2つの銀河が衝突しているようすをとらえたものだ。この2つの銀河は「おおぐま座」の方向およそ1億4500万光年の距離にある。どうやらここには大量のチリ――大質量星が作り出したもの――が含まれるようで、それらが星々からの光 (特に紫外線) を吸収するため、紫外線で見ると何とも風変わりな姿に見えている。そして、このような銀河どうしの衝突は初期宇宙ではありふれたものであると考えられるため、この画像は初期宇宙の多くの特異な銀河の姿を説明することに大いに役立つだろう。2000年7月11日の撮像。

Image credits: NASA, Rogier Windhorst (Arizona State University, Tempe, AZ), and the Hubble mid-UV team