複数の銀河衝突が物語る初期宇宙

【1999年11月24日 Space Science Update (NASA, STScI)

ハッブル宇宙望遠鏡はひじょうに強力な赤外線を放つことで知られる123個の銀河を約3年間かけて観測し、少なくともこれらの銀河の3分の1が複数個の銀河による衝突を起こしていることが明らかになった。初期宇宙ではこのような複数の銀河衝突が頻繁に行なわれていたと考えられる。

ULIRG(ultraluminous infrared galaxy)

ハッブル宇宙望遠鏡が観測したのは、ULIRG(ultraluminous infrared galaxy)と呼ばれる赤外線でひじょうに明るく輝く銀河で、その赤外線での明るさは私たちの銀河の100倍以上になる。1980年代に赤外線観測衛星IRASによってその存在が確認された。

ハッブル宇宙望遠鏡は地球から30億光年以内に位置する123個のULIRGを観測し、これらの銀河の少なくとも3分の1が複数個の小さな銀河による衝突を起こしている状況が明らかになった。これまでは2つの銀河衝突と思われていたものも、ハッブル宇宙望遠鏡の高分解能観測により複数銀河による衝突が多数見つかった。

複数の銀河衝突により強烈な潮汐力が生み出され、銀河内部では活発な星形成が引き起こされると考えられる。このとき、星を形成する前段階のガスが赤外線を強烈に放射しているのである。

地球から30億光年以内というと、宇宙全体からみればそれほど遠い場所ではない。そのため、この画像は宇宙が誕生してから比較的時間が経過した後に起きた銀河進化のようすを見ているものと思われる。これよりも前の宇宙ではさらに活発な銀河衝突が起きていたことが伺われる。

<参照>
STScI-PRC99-45 November 22,1999