春から夏にかけて、火星観望のチャンス!

【1999年4月30日】

今年春から夏にかけて、約2年ぶりに火星観望の好機がおとずれます。地球に最接近するのは5月2日。南の空、おとめ座からてんびん座にかけて、ひときわ赤いともしびが灯ります。すぐ脇には澄んだ白い輝きを放つ星、おとめ座のスピカ。真珠星の名をもつこの星との競演は、いっそう火星の”赤”を引き立たせてくれることでしょう。

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今回の接近はいわゆる”中接近”。最接近時における距離は8654万kmで、2003年の大接近の5576万kmに比べれば遠いものの、小接近だった前回の1995年の約1億kmよりはだいぶ近づいています。

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火星はもともと小さな惑星です。半径は3400km程度ですから地球の約半分しかありません。体積に直すと、地球の中に火星が7個も入ってしまう計算になります。ですから、地球のすぐ外側の惑星であるにもかかわらず、小型望遠鏡ではふだん表面の模様を観測するのが難しい惑星の一つです。今回の接近では見かけの視直径の大きさが最大16.2秒角で、木星の半分程度になります。 望遠鏡を使えば、めったに見られない火星表面の様子を楽しむことができます。


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火星岩石の顕微鏡写真

火星といえば近年各方面からホットな話題が急浮上してるのはご存知の方も多いはず。1996年8月、火星から飛来したと思われる岩石の中に生命の痕跡と思われる構造が見つかったという報道は多くの人々を驚かせました。地球外生命体の存在の是非をめぐり、火星は一躍注目を浴びるようになりました。


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火星表面を調査するソジャーナ

その渦中にあって、1997年7月、アメリカの探査機マーズパスファインダーが21年ぶりに火星に着陸し、探査車ソジャーナを火星表面に送り出すなど、さまざまなデータを取得することに成功。その後を追うように同年9月、火星探査機マーズグローバルサーベイヤーが火星に到着、火星磁場の検出や人面岩の再調査など、貴重な研究データを取得しています。米国は今後10年間に 10機にも及ぶ探査機を火星に送り込むことを計画しています。また日本の宇宙科学研究所でも1998年7月、惑星探査機「のぞみ」を打ち上げ、現在2003年末〜2004年初めにかけての火星周回軌道投入に向けて飛翔を続けています。 火星探査はいよいよ新開拓時代に入ってきたといえるでしょう。

今後数年内に火星についての見識は大変革をとげるかもしれません。 そのような目で今宵も火星を眺めながら、その赤いベールの下に秘められた 真実にあなたも思いを馳せてみませんか?

関連リンク
 ・ステラプレイヤーの星図サンプル「火星儀」
 ・ステラプレイヤーの番組サンプル「火星接近」
 ・火星探査の成果を集大成したCD-ROM『火星探検』