火星探査機「のぞみ」火星到着に大幅な遅れ

【1999年1月12日 文部省宇宙科学研究所発】

日本初の火星探査機「のぞみ」は、現在火星に向かって航行中であるが、昨年12月20日の地球スイングバイ時に問題が生じたため、その後の検討から、火星到着が、当初の計画から大幅に遅れて、2003年末から2004年初頭になることがほぼ確実となった。(1998年12月21日の記事参照)

当初の計画では「のぞみ」はこのまま火星に向かい、1999年10月に火星に到着する予定であったが、1998年の地球スイングバイ時に酸化剤加圧バルブ系が不調となり、推力が不足したため、これを補正するために予定より多くの推進剤を消費してしまった。
このため、現在の推進剤量に基づいて軌道計算の見直しを行なった結果、1999年10月の火星軌道投入をせずに、今後さらに2回の地球スイングバイを経て、2003年末から2004年初にかけての時期に火星軌道へ投入することが適切であるとの結論が得られたという。

文部省宇宙科学研究所では、今回の計画見直しによって、当初予定していた火星到着時期からは遅れるものの、危険を伴うスイングバイ時のエンジン噴射が必要なくなり、また、火星投入時の推進剤の消費量を抑えることができるため、科学観測という目的のために最適な条件で火星周回軌道へ「のぞみ」を投入できるとしている。

なお、この遅れにより、現在計画中のアメリカの火星探査機(マーズ・グローバル・サーベイヤー、クライメート・オービター)との共同観測が困難になるが、ヨーロッパの火星探査機(マーズ・エクスプレス)との共同観測が実現できる。また、火星観測期間が太陽活動静穏時になるため、観測の主テーマである火星電離層と太陽風との相互作用の研究が好条件で観測可能となる。そのほかにも、惑星間塵の観測が長期間できるなどのメリットもあるとのことだ。

火星探査機「のぞみ」については以下のホームページに詳細がある。
http://www.planet-b.isas.ac.jp/