超巨大ブラックホールでとらえられたX線源の移動

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【2014年8月14日 Royal Astronomical Society

超巨大ブラックホールのごく近くで、コンパクトなX線源「コロナ」が移動するという珍しい現象がとらえられた。ブラックホールに近づいたX線は重力の影響でぶれを見せ、ブラックホールの円盤内部を照らし出した。


超巨大ブラックホールとその周辺の想像図

超巨大ブラックホールとその周辺の想像図。クリックで拡大(提供:NASA-JPL/Caltech)

ペガスス座の方向約3億2400万光年の距離に位置するブラックホール「マルカリアン335(Mrk 335)」は、太陽1000万個分もの質量が太陽の直径の30倍ほどの領域に詰め込まれた天体だ。高速で回転していて、周辺では時空が大きく歪んでいる。

Mrk 335を取り囲む降着円盤の周囲には、温度が高く磁化した「コロナ」と呼ばれるコンパクトなX線源が存在している。NASAのX線観測衛星「NuSTAR」(核分光望遠鏡アレイ)は、そのコロナが数日かけてブラックホール近くへと移動するようすをとらえた。

コロナがブラックホールの近くへと移動するにつれて、コロナから放射されるX線がブラックホールの重力に強く引っ張られ、X線が激しくぼやけたり引き伸ばされたりした。同様の現象はこれまでにも観測されたことがあるが、今回ほど激しいものが詳細にとらえられたのは初めてだ。

コロナの形や温度については不明のままだが、そこに光速に近い速さで移動する粒子が存在することは知られている。また、コロナは移動から数か月経過してもブラックホールに接近した位置にあるようだが、コロナは果たして戻るのか、戻るとすればいつなのかといったことについてもわかっていない。

NuSTARはさらに、ブラックホールの重力によってコロナの光が引っ張られ、超高温になっている周囲の円盤の内寄りを照らし出しているようすを明らかにした。移動するコロナが、研究者が観測したいと思っている領域に正確にフラッシュライトを当てているようなものだ。コロナの性質や超高速で自転するMrk 335の速さなどを明らかにする助けになるかもしれない。

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